建築設備トラブル㉔ 現象要因別トラブル⑳
【機能低下】
損傷・腐食トラブルに至らないまでも、経年変化、スケールの付着、劣化、小さな腐食その他の要因で機能低下することも多い。誤作動や・不作動のようにある日突然機能障害が起こるのでなく、長い間に徐々に変化してゆく場合は変化の度合いを把握するのが難しい。
エアフィルター、排気ファン類の機能低下については定期的な清掃で対応している。
Vベルトの緩み、ファンの汚れによる風量低下トラブルはその一例である。サブコン時代に排気が悪いと呼び出され、電流値を調べたら無負荷電流値近くまで落ちていたことがある。毎日アンペアを記録していても、徐々に値が落ちていては機能低下は分からない。そのファンの設計基準の電流値を日報に記録しておくほかに、動力盤の電流計のところにも基準の印をつけて置くようにお願いした。どこでも同じような現象があると見えて、最近は電流計で機器の基準となる電流値のところには先を尖らせた赤い細いテープを貼ってあるところが多い。
「ちりも積もれば能力落ちる」事例は類書にある。
配管類の腐食によるトラブルも、具体的な機能障害に至るまでは時間がかかる。塩ビライニング鋼管が市場に出始めた初期には、管端コアが開発されていなかったので、数年後に継ぎ手部に大きな錆こぶが発生し水の出が悪くなるという機能低下が発生した。ファイバーグラスで覗くまではマサカそんな物ができているとは気がつかなかった。
排水管の汚れによる機能低下は想定内のことであるから、定期的な管内清掃は通常のことである。
とはいえ定期的清掃を怠っているマンションやビルも多いと見えて、排水不良トラブルは多い。
(コラム)
築40年以上経つ我が家では、浴室の床排水(在来工法)の流れが悪くなっているので、先頃排水管の清掃をやってもらった。配管内部は綺麗だったとのことであったので床排水不良の原因を清掃会社の若い衆に尋ねた。鋳鉄製椀型トラップの椀の蓋裏側と受け口側で錆が成長し、水の流れる隙間が狭くなるためであると教わった。外してみたら椀蓋の内側の錆は、水が溜まるレベルのところで空気にも接触するので特に錆で厚くなっている。この錆を叩き落したら、床排水の流れが良くなった。流出側の配管端部の錆瘤も落としたのは勿論である。眼からうろこの「マサカ」の話であった。
戸建住戸では、樹木の根が排水桝と埋設排水管の隙間から浸入して育ち、排水不良になった事例を後輩の技術者から聞いた。排水管内は栄養豊富であるので根っこの成長も早いそうで、取るのに苦労したとのことである。同様に、木の根は排水管をもちあげることもあるので外構排水の配管は樹木に要注意である。