「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑪
22.ダクト結露のトラブル-低温室におけるダクトの断熱工事は入念にせよ!ー
その1:食品の低温冷蔵庫(室温5℃)の給気ダクトが結露して、断熱材が水分を含み断熱効果の低下により、装置の容量不足となった。冷風は低温型パッケージで送風されていたがサプライチャンバーとダクトの接続部分の断熱施工に問題があった。この部分の施工を入念にやり直した。
その2:食品工場の低温作業室(室温10℃)は低温型パッケージにより室内が冷房されている。この還気ダクトの断熱材が機械室内で水分を含み、水滴が床に落ちるほどになった。換気系統のダクト内は負圧となるため、断熱材の隙間を通して外気が吸い込まれ鉄板に降れて結露したものである。対策としては還気ダクトを全面シールし、リークがないようにした。
その3.全天候実験室(室温-15℃~45℃可変)の装置を運転すると、給気ダクトの断熱材の表面に水滴が付き、機械室の床に多量の水が溜まった。ダクトは溶接加工であったが、装置は間欠運転であったため、停止時にピンホールより外気が浸入して結露を生じるため断熱効果が低下して断熱材表面にも結露をし始めた。対策としてはピンホールを補修した。
・解説では産業空調設備が、特殊な室内環境条件にあることと、それに十分配慮した設計・施工が行われることを述べている。
23.内装材の結露ー建築的断熱のチェックも忘れるなー
その1:寒冷地の某マンションでは、浴室排気は各戸別の天井埋め込み換気扇で行っていた。冬にこの換気扇を使用すると、浴室の隣の部屋の壁に水滴が生じた。
原因は排気ダクト(断熱、CD無し)の停止時の外表面結露であった。換気扇停止時に、外壁ガラリ側より冷たい外気が浸入しダクト内部が冷却されて外表面温度が低下し結露・凍結したものである。
各部分の温度は次のとおりであった。外気温度:ー15℃、天井内温度:10℃、天井内相対湿度:70%、天井内露点温度:ー7℃、ダクト内部温度:ー7℃、ダクト外表面温度ー1.8℃。
対策としては、ダクトの断熱を行ったとの事である。
(コメント)寒冷地の排気ダクトでは上記の配慮を行うべきである。全熱交換機を使用した事例で熱交換後の排気ダクトに断熱がなく結露した事例がある。
その2:某研究所の実験室は温湿度を可変にして製品の劣化を測定するものであるが、室内温湿度は恒温恒湿が条件なので、床、壁、天井は十分に断熱されている。この室で、冬にDB40℃、R.H.90%で運転したら、外壁に面した個所で一部汗をかいたようになった。
コンクリート構造壁の外壁面はグラスウール75mmで断熱されていたが、仕上げ材のボードを固定する軽量型鋼の部分で断熱欠損となり、ヒートブリッジが形成された為である。対策としては断熱材の詰め込み等を行ったが、完全には補修は出来なかったとの事である。
その3:(寒冷地の)某ホテルの客室は、FCUと空調機で処理された外気の給気により空調されている。建物は年末に完成し、空室の外壁で室内表面に結露が生じた。状況は、外気温:-3.5℃、室内空気温度:10.5℃、給気風量:80m3/h、給気温度22℃、給気湿度:50%。
結露原因としては、FCU停止のため室温が低く躯体表面温度も低かったものと思われある。その他新築間近で躯体コンクリート表面からの水分の蒸発も原因と思われる。
対策としては、給気の相対湿度を35%に下げたら結露はなくなった。