「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑬
27.エアフィルターの破損ー空調機回りダクト系の偏流防止は万全か!ー
その1:某クリーンルームの試運転の際に、二次フィルターの沪材が吹飛んでしまった。エアーフィルターは、ガラス繊維のフェルト状のものである。
・2次フィルターが空調機の吐出側に設けられていたため、送風機の早い風速を直接受けたためであった。
・対策として空調機ファンの吐出口と二次フィルターの間にパンチングスリットを設けた。
その2:空調機の吸込み側チャンバーにOA、RAが上部から接続されている装置で、使用後数カ月でエアフィルターの一部が破損してしまった。エアフィルターの面風速は2.5m/sで背系されていたが、破損した部分の風速は5~8m/sであった。
・対策としては、パンチングスリットを設置した。
(コメント)いずれも設備設計者が空調機の設計を行っていた頃の話である。ただし現在でも標準仕様と違った形の空調機を使用する場合は、内部での偏流には注意する必要がある。
28.機器選定に関するトラブルー機器選定は容量チェックだけではない!ー
・ここに幾つかの事例を紹介するが、対策には両案はない。機器選定の際には慎重に行う他ない。
その1:大容量機器の制御方法
・昭和44年に建設された工場である。空調は、レシプロ型冷凍機(60RT)と直膨コイルを冷媒配管で連絡した組み立て式空調機を用いた単一ダクト方式であった。冷房負荷があるときは問題なかったが、低負荷時に冷凍機の発停が激しく、マグネットスイッチが焼き切れてしまった。
・冷凍機には容量制御装置が備えられておらず、ON-OFF運転の繰り返しであった。また、工場の系列メーカーのものを使用したため、翌検討がされていなかったのも原因である。
(コメント)オソマツ以前の話である。小生の入社5,6年の頃の話ではあるが、若手技術者としても、このような設計は考えられない。
その2:電力の周波数と電動機の回転数
・静岡県東部の某建物で、小規模な改修工事があった。工事内容はエアハンドリングユニットを1台新設し、それに伴う配管・ダクト工事であった。試運転時に風量が大幅にダウンしていることが分かった。
・原因は50サイクル地域に、60サイクル仕様の電動機が取り付けられていたためであった。
(コメント)設計・施工いづれの責任としてもオソマツな話である。改修工事であるから、工事業社が気が付かなかったのは不思議である。
その3:機器の疲労度
・クリーンルームのエアーワッシャーの送風機が、二年ぐらい使用していたら破損してしまった。
・送風機のモーターが2極のものであったので、起動時のトルクが大きく、簡潔運転の繰返しで披露したためであった。
・対策として送風機のモーターを4極に替えた。
(コメント)そういうこともあるかと、参考になる事例である。
その4:ポンプの背圧
・某建物の空調設備は地下機械室に冷温水ポンプ、冷却水ポンプが、塔屋屋上に冷却塔、膨張タンクが設置されており、その高低差は約60mくらいであった。配管工事完了後水張りを行ったら何台のポンプからの水漏れが発生した。
・原因は、標準品で発注したため、ポンプの耐圧(背圧)が小さかったためであった。
・対策としては背圧が大きくなるポンプ交換した。
(コメント)建設年代は不明であるが、31m以上の超高層建築がけ計画されたころの話であろうと思われる。このような検討が必要であるとも思わなかったのであろう。筆者もこの物件に携わっていたら同じようなことをしていた可能性もある。