「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑯
33.ボールタップの故障ーボールタップの故障は重大事故を招くー
・某建物の蓄熱水槽の配管システムは真空ポンプによりサクション側の管内から水が落ちないように計画されているので、フート弁は取り付けられていない。ところがポンプのサクション側より異物を吸込み、ポンプが故障してしまった。
・原因は、蓄熱水槽の給水用ボールタップのフロートのねじが、冷水返り管による波立ちのため、緩んで外れ、吸込み管より管内に吸い込まれてしまったものであった。
・①フロートとアーム棒のねじ部分をハンダ付により固定した。②吸込管の先端に金網を付けた。
※ボールタップトラブル事例
(1)某事務所ビルの暖房サイクルは、蒸気(2kg/㎠)を空調機の加熱コイル、ファンコイルユニット系統の熱交換機に供給し、比較的高い温度で還水槽に戻されている。還水槽にはボールタップで給水されていた。試運転したら、ボールタップのフロートがパンクして水が流れ放しになった。
・対策としては環水温度に配慮して複式の耐熱性のボールタップに交換した。
(2)某工場で暖房が効かず、室内温度が上がらない日が続いた。原因は(1)と同じように温水蓄熱水槽BTのフロートがパンクして、給水が流れ放しになり、温水温度が低くなった為であった。BTの位置がマンホールに遠く離れていたため、暖房シーズンが終わる迄手動給水を行った。
(3)パーッケージ型空調機に内蔵されたパン型加湿器が機内を通過する風の影響でフロートが激しく動いてアーム棒より外れて、給水が流れ放しになった。オーバーフロー管では排水できず、室内や階下に漏水して事故に気付いた。
(4)水位調節のためアーム棒を折り曲げていることがあるが、何度も繰り返しているとアーム棒が折れてしまうことがある。水位の微調節の場合は注意が必要である。
※BT使用上の注意事項
・蓄熱槽に設けるボールタップは、➀返り管の近くは避ける、②点検しやすくしておく、③水位の変動の大きい所を避ける、等に考慮して取付け場所を決める事。
※BT損傷の要因は、➀フロートのこきざみな上下運動によって、パッキン、固定ピンフロートの摩耗、アーム棒の捻子部がおれるためである。この事例は、蓄熱水槽だけでなく、冷却塔、空調機内蔵のパン型加湿器にもみられる。