「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑳
41.蒸気コイルの表面温度はムラがある(その1)ー送風空気は十分混合して送る事ー
・蒸気加熱コイル(ヒータ)を内蔵した空調機(送風機2台)でホテルの暖房を行ったところ、片方のファンの系統の客室が暑すぎるほどほどとなるが、もう片方の系統は吹出し温度が上下して室温が一定しないというクレームになった。
・原因は、ヒーターの蒸気入口側の表面温度にバラツキがありそちら側の送風機の送風温度が高く、吐出空気が、もう一方の空気と混合されないまま送風された為であった。
・対策としては、両送風機のダクトは一旦合流されているので、合流点にスプリットダンパーを設け、高温側空気を絞るようにした。
(コメント)冷温水コイルは、冷温水の出入口が同じ側であるので、コイル表面温度の違いによる、コイル前後の空気温度は平均化される。しかし、蒸気コイルの場合は、蒸気入口で熱交換されて凝縮水になると、コイル出口側の加熱能力は落ちる。したがって、蒸気コイル出口温度は場所により大きく変わる。これは送風機が1台の場合でも同じである。したがって、出口空気を十分混合して送風するような配慮が必要である。
42.蒸気コイルの表面温度はムラがある(その2)ー多段コイルにはトラップも多数にせよー
・4段に積み重ねた蒸気コイルに、自動2方弁1台で制御を行ったところヒーターの表面温度にムラが生じた。トラップは4台分まとめて一つであった。
・対策としては、ヒーター2段ごとに2方弁制御することとした。
・解説には複数台蒸気コイル周り配管法の図があり参考になる。(後日挿入)
(コメント)解説にもあるが、多段設置された蒸気コイルでは、下段のコイルに凝縮水が溜まりやすく、効率低下となる。各コイルごとにトラップを取付ける必要がある。
43.管末トラップを忘れ暖房の立ち上がり不良ー給気管の凝縮水の処理とTrの容量は十分あるか?ー
・蒸気主管の末端につないだ加熱コイルで暖房はじめに温度がなかなか上がらなかった。
・原因は蒸気主管の凝縮水がコイルに流れ込みトラップの還水処理が十分に出来なかったためである。
・対策としては、コイルドレン管端末に排水管とバルブを設け、立ち上がり時に水抜きをすることとした。
・解説では、対策を姑息な手段としている。蒸気主管の凝縮水は単独処理すべきであって、蒸気コイル経由で処理するとはとんでもない設計であると述べている。小生も同感である。