「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)㉖

2021年05月14日

52.ポンプのキャビテーションー施工図の完備、施工チェックを怠るなー

・都内にある地下4階、地上10階、塔屋3階建ての事務所ビルで、5階の一部が電算機室に改造され、パッケージ型空調機が電算機室に、冷却塔は塔屋屋上に設置された。冷却水ポンプは塔屋2階に設置され、冷却水配管は空いているスペースを利用したが、何回か振るような配管であった。

・工事完成後試運転したところ、ポンプがうなり冷却水循環量は少なかった。

・塔屋2階の冷却水吐出側配管は、塔屋屋上の冷却塔に立上り、吸込み側配管ルートは、冷却塔水槽出口⇒立下り配管⇒パッケージ型空調機(5階)⇒立上り配管⇒ポンプ吸込み口であった。

・サクション側の配管抵抗が大きくなったためキャビテーションを起こしたものと思われる。

・ポンプ出入口配管接続を取り替えたら、スムーズな運転となった。

(コメント)話には聞くがキャビテーショントラブル事例にお目のかかるのは初めてで、「ナルホド」と納得させられる。

53.冷水コイル、蒸気コイルの凍結破損ー寒冷地以外でも冬期の凍結に気をつけよー

(その1)冷水コイルの凍結破損(水抜き忘れ)

・東京近郊のある病院で、動物飼育室系統の空調は全外気方式24時間運転で計画され、空調機の構成は、冷水コイル、蒸気コイル、蒸気加湿であった。

・竣工後間もない冬の朝に冷水コイルが凍結破損した。原因は冷水コイルの水抜きをしていなかったためであった。オソマツな事故であるが、気をつけなければいけない。

(その2)冷水コイルの凍結破損(j外気、還気の混合不良)

・南関東の生産工場の作業室では24時間運転であった。冬のある日外気が直接当たっている冷水コイルで凍結・破損事故が発生した。

・原因は外気と還気が完全に混合せずに、冷たい外気が直接冷水コイルにあたったためである。

・対策としてはレタンチャンバーの手前にミキシングチャンバーを設けた。

(コメント)空調機のレタンチャンバーが、外気とのミキシングチャンバー機能を発揮しない事例はいろいろある。

(その3)蒸気コイルの凍結破損(蒸気コイル内の残溜凝縮水の凍結)

・寒冷地の工場で正月休みに全ての空調(暖房)を停止したn。休み明けに運転を再開したところ、蒸気を供給して間もなく、蒸気コイルから蒸気が吹き始めた。

・原因は、蒸気コイル内の凝縮水が完全に排出されずに一部残留したものが、休みの間に冷やされ凍結されたものと思われる。この時の正月休みは特に寒く、ー14℃を記録した。

・対策としては空調機内に電気ヒーターを設けた。

(コメント)高砂時代に札幌支店勤務経験のある上司からは、寒冷地の蒸気コイルは縦型とし、空気はコイル部分だけを通るような構造とする事を茶飲み話で教えられた。この事例は横型コイルかもしれない。

(その4)温水コイルの凍結破損

・某研究所の実験室では、中間期(11月中旬)に、室内条件20℃、50%っで運転されていた。空調機はパッケージ型(30RT)で、温水コイルを組み込み、さらに中間期の運転も考えて低圧カットが起こらぬよう(?)外気取り入れダクトには電気ヒーターを設けている。ところがこの温水ヒーターが凍結破損し機械室内が水浸しとなった。

・原因は、パッケージ型空調機の直膨コイルと温水コイルの間隔が10mm程度しか離れていなかったため、直膨コイルの冷輻射の影響で、温水コイルが凍結破損したものと思われる。

・対策としては、コンプレッサー運転時に、温水コイルの二方弁が10%程度開くようにインターロック回路を設けた。

(コメント)これも筆者は未経験であるが、ありうるトラブルである。










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