「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)㉘
55.冷却塔の並列運転で循環水量がアンバランスー冷却水が均一に分配されるように配管方に気をつけよー
・B2F~9F、P2F、延べ約4,000mのオフィスビル。400RTのターボ冷凍機1台が地下機械室に、200RT用の冷却塔2基が塔屋屋上に設置されている。冷却水配管は冷凍機より一系統で立ち上がり、冷却塔付近で分岐しているが、各冷却塔迄の配管の長さや曲がり管の数は、ほぼ同じである。
・試運転したところ、冷却塔に吐出される水量が極端にアンバランスであった。
・冷却塔周りでの配管の振り方に無理があり、曲がり管部分での偏流の影響が大きかったものと思われる。
・対策として、水量が出すぎている方の冷却塔の冷却水出口にオリフィスを設けた。
(コメント)オリフィス以前にバルブが付いていなかったのか疑問であったが、解説では吐出管・吸込み管にバルブやオリフィスを取り付けるように指導されていたので、多分付いていなかったのであろう。なお、連通管の設置も、水槽内の貯水量の調節には有効であるが、吐水量に違いがあると、熱交換性能が異なってしまう。なお、二槽式受水槽の場合も、吸込み配管を一本にまとめると、水槽の水の使用量がアンバランスとなる。
56.冷却塔が火の粉で焼失―煙突の位置や高さをチェックしたかー
・昭和42年に建設されたオフィスビルの塔屋屋上に設置された350RT用の冷却塔が、10年後の冬(冷却塔休止中)に煙突より飛散した火の粉により焼失した。
・冷却塔の主部材はFRP、充填剤はペーパーハニカムであった。冷却塔から水平距離4mの位置に煙突(高さの記入なし)があった。
・原因は未焼ガスがタール状となり煙突より火の粉となって飛散したのが直接の原因であるが、そのほかに原因として、①当日は火災注意報が発令されるほど外気が乾燥していた、②冷却塔と煙突が接近していた、③冷却塔が休止中で水を抜いていた、ことを挙げている。
(コメント)そのほかの原因を上げると、物事の本質が見えなくなる。何はともあれ煙突から火の粉が出て良い訳はない。煙突の清掃不良が一番いけない。
57.電気ヒーターの入り放しでスプリンクラーが作動―安全装置(過熱防止)と制御装置の点検を忘れていないかー
・5.5kWのパッケージ型空調機に内蔵された電気ヒーターが、ステップアップコントローラーの故障で、最大容量のままで入りっぱなしとなったため、室温が異常に上昇し、スプリンクラーが作動し、質量分析室(温湿度設定23℃60%)は水浸しとなった。
・対策としては、室温が所定の温度以上に高くなった時には、電気ヒーターの電源を自動的にカットオフし、警報する装置を増設した。
・解説では、SPヘッドの作動温度は消防法規則の79℃のものでなく、損害保険料算定会の規則、55℃以上75℃未満のものを使用していたのではないかと疑問を呈している。その場合でも、室温上昇というよりは、55℃以上の吹き出し空気の吹付によるものであろと考えられている。
(コメント)蒸気ヒーターの場合の蒸気漏れにより吹き出し空気温度が上昇してSPヘッドが作動した事例は、筆者の著書以外にもたくさんある。