「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)③
2.ゾーニング・トラブルあれこれー使用目的・使用時間・負荷状況をみきわめよ!ー
・某病院レントゲン室で、検査室の冬の室温が上がらず患者側から寒いという苦情が多い。
・レントゲン機械室は機械の発熱により冬期に室温が高くなるので、この室を重点的に温度設定すると、他室の温度が低くなってしまう傾向がある。(サーモスタットの位置が機械室なのか?)
・対策として、➀ダクトを分けて検査室系統に再熱器を設ける、②室温の低い部屋に直接暖房機を補助に置く、の二つの案のうち、施工性に配慮して②の案を採用した。
・(別事例)某病院では、6系統の空調機がある。冷水はターボ冷凍機である(台数不明)。回復室(ママ)系統の空調機は終夜運転が必要とされる場合があるが、冷房負荷は冷凍機の20%に過ぎないので、サージング状態運転を続け、蒸発器を凍結破壊した。チューブ数本の取替となった。
・対策としては、使用時間帯が異なる室の空調をパッケージ型空調機で行うよう計画中とのことである。
(コメント)・空調設備における暑い・寒いのトラブルは、漏水、騒音とともに建築設備の3大トラブルの一つである。ゾーニングの適否はこのトラブル発生要因の一つであるので参考になる話があるかと思ったが上記のような単純な原因であった。これは「冷暖房完備」時代のトラブルである。この時代は、「冷暖房完備」の看板が飲食店の客引きに役立つような時代であり、空調の質も冷えていれさえば良い冷房レベルにあった。したがってこの書にもゾーニングによるトラブル事例はここだけである。尤も設備計画・設計の際に気を付けているので、最近のトラブル本でもこの要因によるトラブル事例紹介は少ない。
・はじめの事例では、温度制御は検査室を対象とし、冬季の機械室温は成り行きとする案もある。
・追加事例では、ターボ冷凍機は1台であったと想定されるが、冷水配管系に蓄熱タンクを組み込むことでの対処も可能である。
★最近の個別ヒートポンプユニット方式の場合は、室外機単位でゾーニングすることが重要である。1台の室外機で、負荷条件・使用条件等々の異なる複数の室内機に対応することは難しい。