「空調設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑦
10.コイルの目詰まりで送風量が減少ー性能の良いエアフィルターとマンホールを設けよー
・ショッピングセンター玄関部分天井内にもうけた空調装置の冷温水コイルに塵埃が付着し、吹出し口から風が出なくなった。(発生年度昭和51年)
・原因は吸込み口にフィルターが付いていなかったためであった。コイルの清掃と、フィルターの取付を行った。
(コメント)昔の話とはいえずいぶん乱暴な設計・施工である。解説ではエアフィルターの機能について除塵だけでなく、コイルの汚れ防止について詳説してある。冷暖房完備の時代に近いころであったからこのような『マサカ』以前のトラブルもあったことと思われる。
11.排気の合流に失敗して換気量不足ー相互干渉(動圧の影響)がないか、排気口の面積は十分かー
(その1)・排気シャフトに接続してある数台の送風機を同時運転したところ所定の排気量が得られなかった。排気ガラリに5~7m/sの風が吹き付けられると、排気量がさらに10~20%減少した。
・排気ダクトをシャフト内で立ち上げたほか、3面ガラリを4面とした。
(その2)・数台の排気ファンの送風系統を共通ダクトにまとめてガラリ接続したところ、吐出圧の小さい排風機の風量が著しく低下した。
・各排風機のダクトを、単独で排気ガラリチャンバーに接続した。
(解説)送風機の吐出側の並列運転では各系統からの合流地点での気流の衝突その他に配慮する事その他送風機の並列運転時の特性曲線等を使って解説してある。また、せっかくガラリが大きくしてあっても、接続ダクトの風速で騒音トラブルが発生することがあることも注意してある。
(コメント)『マタカ』の事例であるが、経験工学の範囲のトラブルである。筆者は現場での施工図作成段階で先輩の指導を受けた。
12.空調機の並列運転で風量確保に失敗ー同時運転した時の圧力損失を確かめよ!ー
・コンクリートシャフトによる共用の外気取り入れダクトに、性能の異なる4台の空調機を連結した。全系統を同時運転したら、圧力性能の低い空調機の風量が著しく減少した。
・対策として各空調機の吸込み口にダンパーを設置(これがなかったとは!)して風量を調節し、送風機の回転数多くして、各空調機の風量を調節した。
(コメント)解説にもあるが、直接の原因はコンクリートシャフトの風速が10m/secを超えていて大きすぎることであった。最大通過風速が5m/sec以下であれば、吸込み風量にアンバランスが生じることはないとのことである。吸込み口にダンパーを設置してなかったとは!昔の話としてもオソマツである。