「給排水設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑫

2021年01月28日

29. ピーク時の水圧不足による含水(湯が出ない)―上向き給湯方式では、下階で大量の湯を使うと、上階で湯が出ない―

・北国の某百貨店で売り場の増築を行った。最上階に洗面所が設置され、下層階のカフェテラスはレストランに拡張された。貯湯槽は地下機械室にあり、熱源には余裕があったが、当初の予定にはなかったので給湯管に余裕は持たせなかった。(サイズアップしなかったの意味であろう)

・営業日の正午頃から2時ごろまで最上階の洗面所で、湯が出ない、給湯栓からの空気の吸引、お湯の脈動、騒音等が発生し苦情が続出とした。

・原因は下の階のレストランの厨房での湯の使用量が増えたためである。配管を別系統とすればよかったのである。

・対策としては水位の低下を調べ、それより下に加圧ポンプとバイパス管を設け、タイマーにより加圧ポンプを運転することとした。

(コメント)これは昔よく聞いた話である。配管ルートに注意しないと現在でもこのようなトラブル発生の恐れはある。事例が載っているが省略する。


30. 返湯管を伝わって冷水が逆流―温水と冷水の比重差による流れと配管の摩擦抵抗に注意ー

・地下1階地上5階のビジネホテルで。関節加熱方式の中央給湯方式で貯湯槽はB1F。閑散時、ピーク時に関係なく、下層階の数室で給湯使用に急に温度が下がる現象が生じた。

・(系統図の貼り付けができないので、文章説明になるが)給湯管ルートは、貯湯槽⇒立上り配管⇒最上階で展開して各室ごとに立下り⇒返湯管にて立ち下げ最下階でまとめてラインポンプへ⇒貯湯槽、となっている。給水はPH屋上の高置水槽より、ラインポンプから貯湯槽への配管に接続されていたが、ラインポンプの吐出側に逆止弁がなかったため、給水側の冷水が逆流したのである。

(コメント)対策は逆止弁の取付であるが、未経験者にとっては『マサカ』の話であろう。


31. 給湯配管の短絡―返湯管を安易に接続しないことー

・某ビルで重役室にプライヴェートの洗面器が設備された。中央式配管で、構造的制約もあって給湯管・返湯管とも迂回配管となった。さらに近くに便所がありここの洗面器の給湯管と返湯管を接続してしまった。そのため重役室の洗面器にお湯が出るまでに15分近くもかかった。

・原因は便所洗面器周りでのショートサーキットであるので、返湯管を切り離し、循環用のラインポンプを設置したとのことである。

(コメント)この時代は適切な小型電気温水器がなかったので、位置の離れた中央給湯配管から給湯したのであろう。但し現在でもセントラル給湯方式の場合は給湯箇所が主配管から十メートル以上離れていても、それを利用する傾向がある。手洗い器が満水となってもお湯にはならないことがある。小生は定年後工事監理を行った大型病院では、小型電気温水器に取り替えた。この書では、このような対策を提案することは施工業者の責務であると述べている。

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