「給排水設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)⑲
49. 排水桝の洗剤の泡による逆流―洗剤の泡に注意せよー
・某スーパー店(5階建、延べ8200㎡)の増築工事にあたり、増築部の雨排水管が、既設外部配管の最上流の桝に接続された。既設1階の機械室の桝の下流に既設5階の厨房の排水桝があった。
・降雨時に、厨房排水の泡で流れが阻害され、機械室に泡排水が流した。
・既存最終桝の手前に桝を設け、増築部の雨排水管を接続した。
(コメント)このトラブルは、泡の所為というよりは基本的な設計・工事ミスである。
泡のトラブルはこの書の出たころ(昭和53年)集合住宅で多く発生した。小生の会社の設計物件にも数件の事例がある。その後種々の対策案が取られ、泡による排水逆流トラブルは減少したが、平成10年ころ以降に、洗浄力の高い洗剤の開発により、同じようなトラブルが発生。給排水設備研究会の「マンション設備のトラブルと対策」に載っている。筆者の「マンション設備『マサカ』の話」にも、トラブル相談の回答を載せてある。
50. 排水桝内における給水管の漏水―排水桝内に他の配管を設けるな―
・都心の某事務所ビルで、受水槽への給水量が減少し、揚水ポンプの空転が時折発生した。
・当初は近くのビルの新築のための、本管の給水能力低下と考え引込管の造形を計画した。ところが水道局からの水道料金はそれまでの倍額近くとなっており、給水管からの漏水と判明した。
・都心のため、夜中まで車の交通量が多く、漏水探知機で調査したが漏水箇所はわからなかった。
・排水詰まりで排水桝を開けたところ、給水管が配管されており、ソケット部分で漏水していた。
51. 排水桝への屋内排水管の接続忘れ―排水桝への流水試験を忘れるなー
・某公共集合住宅で、竣工後半年ぐらいたってから屋外排水桝付近で地盤の陥没が起きた。
・追加工事による屋内排水管が排水桝に接続されていなかった。ここの衛生設備工事は屋内と屋外の工事が別の業者に発注されていたための、打つ合わせ漏れであった。
(コメント)このトラブルは極めてまれに発生する。小生の事例は一つだけである。低層の某リゾート物件で建築平面ユニットも複雑であった為、1階の排水はすぐ外の排水桝に個別につないだ。竣工後まもなく水が流れないということで未接続が判明した。排水器具が1階の住戸分個別配管となっていたので、通水試験におちがあったようである。