「給排水設備トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会)④
5. 水中モーターポンプの揚水不能
ー転換がやりにくく他の原因による発見の遅れー
・100人収容の独身寮。受水槽は1階階段下で水中ポンプの自動交互運転により屋上水槽に揚水。2年後に、夕方のピーク時に断水が発生、その回数も増えてきた。
・原因は複数考えられたとのことで、参考のため原因究明の過程をあげる。
①この地域は配水管の末端であり、給水事情が良くないので、当初は給水能力不足が想定された。しかし屋上水槽は空であるにもかかわらず、受水槽は満水であった。
②水中ポンプである為、正規の回転かどうかは確認できなかったが、電流値は正常運転であった。
③ポンプの性能低下をチェックする締め切り運転にしたが性能低下は認められなかった。(?)
④仕切弁を開いていくと、電流値は正常なのに圧力が急激に低下した。ポンプ運転を停止したら圧力はゼロとなった。ということでポンプに近いところで水が逃げていることが分かり、逆止弁が錆びにより固着して開いたままになっているのが分かった。
・対策としては逆止弁の取替を行った。
・水中ポンプは可動部分の目視点検ができないため故障の発見が遅れ、保守点検も怠り勝ちであるので、注意が必要である。
6.突風で高置水槽が落下ー空のFRP製タンクは見かけより軽い!ー
・5階建ての建物で、高置水槽は2m3。タンクを屋上に吊り上げて所定位置に設置。正午になったので現場を離れたところ、タンクが地上に落下して破壊した。『マサカ』のトラブルである。
・原因と対策は言うまでもない。容量2m3の鋼板製角形タンクの重量は約550kgに対し、FRP製は約90㎏であり、強風に注意しなければならないのは言うまでもない。この書ではFRPと鋼板製タンクの重量比較表があり、FRP製タンクの強度設計基準が解説されている。
7. 階下の熱による、木製水槽の漏水ー木製水槽は乾燥すると隙間ができるー
これも『マサカ』の話である。
・某超高層ビルで23階に木製の中間水槽が設置され、直下の22階機械室に貯湯槽、ボイラ、空調機が設置された。冬季に機械室天井からの漏水があった。
・原因は階下の熱により、水槽室の空気が乾燥したため、組立材に隙間が生じ揚水間接続部分より漏水したものである。なお、床防水はなかった(これはいけない)。対応としては木製水槽を死滅Kるための丸鋼バンドを増し締めした。
・なお、木製水槽の場合は湿気による腐食を注意している。現在は水槽類はFRP製なので、これはこの時代特有の事故と言えよう。