「給排水設備:新トラブル事例・対策集」(日本建築設備士協会編)⑪
21.給湯用電気温水器の破壊
- この現象は全く未経験である。また、状況や解説を読んでも、どうしてこのようなことになったのか理解ができない。したがって、HP作成趣旨に反するが出典全文を記載する。
【内容】某マンションで、給湯用に深夜電力利用の電気温水器を使用していた。その後温水器の沸き上がりが悪いため、調査のために給水側の弁を閉め水抜きを行ったところ、電気温水器の貯湯部分で激しい音が発生し、変形破壊した。
【原因】水抜きに伴い、電気温水器貯湯部分場真空状態となり、大気圧により変形破壊したものである。
【対策】安全弁立ち上げ部分に真空破壊装置(ヴァキュームブレーカー)を取り付けた。
(解説)電気温水器のような器具は、一般に圧力容器の規制を受けず、したがって外圧及び内圧に対して、それほど大きな耐圧を有していない。しかし1気圧程度の外圧には十分耐えられるような構造になっているが、時によっては本件のように変形破壊を起こす場合がある。したがって真空状態の発生が考えられる場合は、バキュームブレーカーを設置するなど、真空破壊を前もって考慮しておく必要がある。
(コメント)電気温水器初期のトラブルであると思われるが、ちょっと信じられない。
調査時に温水器の湯が沸きあがっていれば、内圧は1kg/㎠程度であるから、水抜き(お湯抜き)により、外圧と合わせて真空度は-2kg/㎠程度になるであろうから破壊の可能性はあるかも知れない。給排水設備の専門家の方にいろいろお話を聞きたいところである。
22.流し台周りの給湯管の漏水
- マンションの流しの給湯栓と給湯用導管との連結管の継手部からの漏水により、玄関から応接室までのカーペットに水がしみた。
- 連結管の取り付けに無理がかかったことと、給湯管の熱ストレスで袋ナットのゆるみがあったとの事である。
- 対策としては連結管をステンレスフレキシブル継手に変えた。また配管は流し台の奥に立ち上がっており、点検口がなかったので点検口を取り付けた。
23.ステンレス製貯湯槽の水素脆性による割れ
- 使用1か月で、4缶の貯湯槽の内2缶の溶接部から漏水が発生した。材質はSUS444で、割れの分布はマグネシウム犠牲陽極近傍に集中し、マグネシウムの減肉は激しかった。
- 原因は以下の2つである。
- マグネシウムの犠牲陽極による陰極防食で水素脆性を引き起こした。
- 鏡板は冷間プレスのため、銅板より残留応力がはるかに大きくなっている。
- 対策は当て板を溶接し、割れがこれ以上進まないようにした。
(解説:原文のまま)SUS444は、SUS304や316などと比べ水素脆性の感受性が大きい。したがって外部電源方式や犠牲陽極方式の陰極防食の役をせず、逆に割れを促進させることになる。以下略。
(コメント)小生は、ステンレス製貯湯槽はSUS306しか使ったことがない。このようなトラブルはこの本で初めて知った。セントラル給湯方式が普及の際の、試行錯誤によるトラブルであるかと思われる。