建築設計と設備トラブル(12)(2010年9月号) ~現場調査③~

2023年05月11日

先月は、敷地の形状と雨水トラブルその他の話をしたが、敷地条件では以下のような自然現象に配慮する必要がある。

  • 雨 :周辺河川の洪水や、集中豪雨時の雨水の浸水・・・これについては今までに何度も取り上げている。
  • 風 :地域特有の風やビル風、風の通り抜け、風による騒音の発生(突起物、隙間風)。
  • 音 :計画地の音環境・・・市街地での騒音対策として、サッシの気密性・遮音性が向上し、逆に内部の音が伝わりやすくなっている。静かなところでは、計画建物からの騒音の影響を配慮。
  • 光・日射:反射ガラスや屋根面の光の隣家への影響。(太陽光発電パネルを北側の屋根に設置し反射光のトラブルがあった)。
  • 熱 :温輻射・冷輻射
  • 氷雪:凍結、歩行困難
  • 空気:周辺施設からの排気ガス、隣接ビルからの排気流入。高速道路・幹線道路の汚染空気の取入。隣接ビルへの排気の吹出。

これらに起因するトラブルのうち、多くは建築計画で対応してもらわなければならないものであり、設備独自で対応出来るものは少ない。

ここでは、風によるトラブル事例を挙げる。

□設備で対応できない風のトラブル

「暑い寒いのクレームは設備」ということで、トラブル現場に立ち会うと、根本的原因は建築にあるというのが風・隙間風によるクレームである。

冬期に足元が寒いというクレームは、1階エントランスロビーや吹き抜け大空間で発生する。もちろん原因は出入り口から進入した冷たい外気である。出入口からの外気は床上を滑るように侵入してくるから、風の吹き込み対策・通り抜け対策が不十分である場合はクレームになることが多い。

床暖房は密閉空間用であり、外気の出入りが大きいところでは対応は難しい。二重ドアでもドア間隔が狭いと、両方同時に開放されることがある。

通常は出入り口周辺にトラブルが発生するが、風が流れやすい形態や、風の吹き抜けのルートが出来てしまうと足元が寒いというクレーム範囲は大きくなる。

上からの温風で暖房を行うことの多い昨今の空調システムでは、密閉空間であっても、大空間の足元を暖めるのは難しい。

このような状況は、出入り口と冬の風向の関係、風の入りやすい形状、風除室の有無等建築の形状に大きな関係がある。これらの情報が建築設計者にフィードバックされなければ、以下のようなトラブルはなかなか減少しない。

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