『設備技術者の修行時代③』ー2 

2021年12月10日

≪現場事務所でのこと≫

現場乗り込み:

根伐段階ではまだ現場事務所はなく、分室の事務所から現場に通っていた。周辺一帯は近くの川の川底であり、地下水も多かったが綺麗な砂利がたくさん取れた。これでコンクリートを打てばいいのにと思った。

三設備同室の現場事務所:

その後駅前広場に面した歩道上に現場事務所が建てられ、衛生設備のN工業所、電気設備のK電工と同じ部屋を使う事になった。T工業㈱のスタッフはS所長、某銀行の現場を竣工させたHさんとMさんの4人であった。工員のIさんもこちらの現場にきてくれることになった。

他の設備屋さんと同室という事は僕にとって予想外のメリットがあった。狭い部屋だったので社員と職人のやり取りも良く聞こえる。仕事の流れもよく分かるし何よりも他の設備の専門用語・業界用語・機器部材名などをいつの間にか覚えてしまったのは良かった。実は一級建築士の試験に大変役立ったのである。僕が受ける頃は「計画」の問題は半分以上設備関係であった。空調設備以外の設備の知識は勉強しないでも耳学問で身に付いていたので、楽な試験となった。

初めて買ってもらった勾配定規:

CADはおろかドラフター以前の時代であるから、設計図・施工図はT定規と三角定規で描く時代である。しかし建物が敷地一杯に計画されていたので、普通の三角定規では施工図が描けない。会社に依頼して勾配定規を買ってもらったが、聞くところによると第1号だったそうである。

施工図の書き方は新人教育でやったのかどうか、見様見真似で覚えた記憶がある。Mさんは年は1つ下であるが会社では3年先輩であり、Hさんと一現場竣工させたばかりである。お二人ともしっかりした施工図を描く。僕は横目で見ながら二人の作図技術を学んだ。ポイントは教えてくれたし、分からない事を色々訊ねたのは勿論である。

変った訪問者にびっくり:

ある日、「所長はいるか」と入ってきたのは一目で分るその筋の方。「お控えなすって・・」から始まって「手前生国と発しますは・・」と続く正式な挨拶をされたのには面食らった。そのときSさんは広いテーブルで施工図を見ており、所長の席には座っていなかったので、「所長は出かけている」ということでお引取り願った。30歳台前半のSさん、痩身・スマートな体型で所長には見えなかったのが幸いであった。

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