『設備技術者の修行時代④』-1
〔2〕STビル現場勤務時代(その2)
≪設計変更の数々≫
設計に変更はつき物とある程度は知ってはいたが、新米にはやはり吃驚であった。(デベロッパー)T社が始めて作る大型ビルであり、高度成長の入口の時期にあってどのようなビルにするか試行錯誤の状況下でもあったのは仕方がない。
- 銀行部分の設計:
このビルはT社・某銀行・個人店舗の区分所有ビルで、先月書いた建築・設備概要はT社ビルの部分である。(建築面積は全体面積)銀行の持分は約3000㎡あり、設計変更ではないがこの部分はH係長の下で最初から筆者がやらせてもらった。ターボ冷凍機+セクショナルボイラの熱源で、空調機5系統・小室はFCUという当時の定番システムであった。設計事務所は某大手事務所で、ここでもこのビルの担当は先輩であった。
- 一ヶ月の工期延長:
現場の前の駅前広場バスターミナルにオーバーブリッジを作る計画が出来、1階の階高をこれに合わす設計変更が行われ工期が一ヶ月延びた。これはその後にたくさん出てくる設計変更の前触れであった。その後周辺に出来たいろいろなビルもこれと階高をあわせてあるはずである。しかしいまだにJRの駅とつながるオーバーブリッジは出来ていない。(このビルは解体され新しいビルが建設された。今回はオーバーブリッジは作られていた。一応歩いてみた。)
又、駅前広場の下も地下街化する計画があり、接続できるようになっていたが、竣工後暫くしての地下街に関する法規制の強化で沙汰止みとなったようである。
- 3度変わった煙突の位置:
スパン割が決まり、鉄骨は梁貫通補強もあわせて製作中であっても、内部のプランニングは、建てながら考えていこうという施主の方針。地下・途中階・上層階と煙突の位置が3回変わった。最後の位置にあわせて下の階は斫って壊し、コンクリート打ち直しになったのは勿論である。こういうのを体験すると、現場での多少の変更などあっても全く気にならなくなる。そういう意味ではいい経験をさせてもらった。上記銀行の煙道はここに接続した。煙道は一旦床面に下げ、本体ビル地下2階の機械室の床(丁度良い段差があった)を床転がし展開したので、煙道専用の排煙ファンを設けた。
- 中々決まらなかったテナント用途区分
建築概要に書いたようにビル用途は今で言う『複合用途ビル』に当るが、テナント用途区分が中々決まらなかった。1,2,3階の銀行(前記の銀行とは別。テナントで入った。)1,2階のT社営業所、2階の喫茶店、3階の書店は割と早く決まったが、店舗階と事務所階(T社の本社他)をどう割り振るかの決定は遅れた。どのようなテナント誘致して店舗構成をするかについても、T社内部でもでいろいろ意見があったようである。用途区分が決まってもテナント割が中々決まらないのも他のビルと同じであった。
最上階と地下2階が飲食店舗階となる事は早くから決まっていたが、最上階の下の階ももう一層飲食店舗階にするかどうか最後まで決まらなかった。結局テナントが決まらず、事務所仕様となったが空調機の仕様変更は間に合わないので風量のプーリーダウンで対応したと思う。