『設備技術者の修行時代⑦』-2

2022年01月05日
  • テーマをもって仕事をすることと確認する事

空調設備の守備範囲は広く、技術革新もあるので、何か必ず1つ以上のテーマをもって仕事に当るよう、よく言われた。物件一つに一つづつのテーマがあれば長い間の技術の蓄積は大変なものになる。自分のテーマについて手書きの厚い資料を作っておられる若手の方もあり、2センチぐらいの厚さの青焼き版(当時はゼロックスは数百ページの資料は全て手書きであった)をいただいたが、大変な刺激であった。この他、課内の会議でも若手社員の技術報告があり、「便覧」のある項目十数ページに相当するような厚い資料を発表する物も居り、技術の面で競い合うと言う雰囲気があった。

上記のテーマばかりでなく、自分の仕事の結果は必ず確認するように言われた。竣工してトラブルがあれば、うまくなかった仕事の結果は自明であるが、うまくいった場合でもその結果をデータその他で確認・把握しておくようということである。

  • 「設計・施工・営業、どれか一つぐらい1人前になったかね?」

あるとき同年代の同僚と現場見学に行った。話題性のあったこの建物の現場所長は以前同じ課の方で、久し振りの顔合わせであった。見学後にこの方から言われた「T社の技術屋は設計もできなきゃいけないし、施工・営業もできなきゃいけない。どれか一つぐらい1人前になったかね?」。若手の二人は顔を見合すばかりであった。

  • 君達が営業の最前線だよ

営業と言えば、その後の上司からも言われた。「T社の営業は、営業の社員がやっているんじゃない。君達一人一人が、どういった設計や工事をするかがお客さんに評価されるんだよ。それがT社の評価につながるんだから営業の最前線にいるんだよ。」という趣旨であった。

  • 「先生沢山チョンボをやって下さい」

毎年正月は先生の所に卒業生が集まるのが通例であった。入社後暫くして近くに引越し、家が近くなったので僕は殆んど毎年顔を出していたが、ある年現れたT社の先輩、お酒の勢いもあって「先生!たくさんチョンボをやって下さい。そして雑誌に発表して下さい」とやった。「僕達がチョンボをやったら、会社をクビになります。先生ならいくらやっても大丈夫です。」には、先生も苦笑いしながら「たくさんやるわけにはいかないけど、失敗を発表するのはいい事だ」とおっしゃった。筆者が現在本誌に『マサカ』の話を連載しているのも、この先輩と先生の言葉に従っているわけである。

  • 空調フィーリング論

空調設備には熱い・寒いのトラブルがつき物である。これについては某先輩は酒を飲むとよく「空調フィーリング論」を展開した。「空調はフィーリングで良い悪いを判断されるから困るんだよな」に始まり、「今丁度いい温度だろ。(ビールをグィッと空けて)これ一杯で暑く感じてしまう。空調の快適性なんてこの程度で変わるんだよ」と続く説得力のある話であった。この話を聞いたせいではないが、暑い・寒いのトラブルの際は必ず温度計を持って行く事としている。又この話は適当にアレンジしてトラブル時の説得用に使っている。

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