エンジニアリングトラブルについて
トラブル本のこぼれ話には空調設備関係トラブルの内エンジニアリングトラブル(以降ENGトラブルと略す)が続いている。トラブルをENGトラブルと建築関係トラブルに分けることについては、「『マサカ』の話」で述べたので、ここに再掲する。
◆ENGトラブルと建築関連設備トラブル(『マサカ』の話138:建築設備トラブル概論③)
建築設備のトラブルは多種多様であるが、大きく分けると、エンジニアリングトラブルと建築関連トラブルに分類することができる。この分け方については、第108話「建築設計と設備トラブル(1)」(2009年10月号)で取り上げたので詳しくは述べないが、トラブル遭遇経験の多いゼネコン・サブコンの設備技術者の方にも納得していただける分け方でないかと考えている。
なお、上記報文では、エンジニアリングトラブルと建築計画トラブルに分け計画段階での設備トラブル防止について述べたが、実際には実施設計や施工段階でデザイン的要求により設備トラブルが発生する事例も多いので、本稿ではこれらを建築計画も含めまとめて「建築関連設備トラブル」と呼ぶこととする。
建築設備は各設備の機能を充足させることを目的とするエンジニアリングであるから、この分野のトラブルが発生した場合は、原因の追究から是正・再発防止に至るまでエンジニアリング的に解決されることが一般的である。
しかし、設備トラブルのなかには、振動・騒音や排気のショートサーキットのように、エンジニアリング的技術だけでは解決できない、または解決のためには非常な手間やコストがかかるものが多数ある。また、デザイン的に無理を要求されて設備の不具合が発生した場合も同様である。建築のリニューアルにより『マサカ』の設備トラブルが発生する事もある。
これらの建築関連設備トラブルは通常はっきりと認識されることが少なく、またその情報も設備トラブルということもあってなかなか意匠設計者まで伝わらない。建築計画に起因する設備トラブルを建築設計者に認識してもらうことは、後から手直しが出来ないような大きなトラブルの防止に有効である。またデザイン的な我儘や自己満足が、建物利用者や設備関連業者に迷惑をかけることがあるということも認識してもらいたいことである。
(1)エンジニアリングトラブル
機能不全や機能障害など、各専門分野で要求される本来機能の不具合はもちろんエンジニアリングトラブルといえる。また、各設備に付随して発生するトラブル(漏水、騒音等々)も基本的にはエンジニアリングトラブルであるが、建築計画が原因のトラブルもある。
これらのトラブルは各設備共通に、システムトラブル、機器トラブル、資材部材トラブル、器具トラブルのように分けられる。詳細説明は省略するがトラブルの原因がどこにあるかを把握することが、解決の糸口である。
(2)建築関連設備トラブル
建築設備は建築に組みこまれているのであるから、計画の段階から、器具の配置に至るまで建築意匠設計の影響を受ける。計画段階では、機器の配置計画、ダクト・配管類のルート計画が設備トラブルに影響する。シャフトの位置や排気ガラリの向きにより設備トラブルが発生する。吹出し口のレイアウトは温度分布やドラフトに大きな係わり合いがあるし、温度センサーの位置もデザインで決められては暑い寒いのトラブルの原因になる。
建築計画・設計の各段階や、ディテール決定の段階において、設備技術者がトラブル情報について建築意匠設計者に伝達を行うことが必要である。