構造計算書偽造事件

2019年09月25日

◆構造計算書偽造事件 ①

断捨離の対象の内、専門の雑誌は後になるが、建築雑誌には設備の記事が少ないので処分対象である。
既に以前から関心のあるところだけ切り抜いてあったが、再度の見直しをしている。
日経アーキテクチュアの2006年の各号は、前年11月に発覚した「建築構造計算書偽造事件」で持ちきりであった。


このブログ(別の物)を読んでおられる方の多くは、建築関係の事は良くご存知でないので、なぜ偽造(インチキ設計)をやったのか疑問であると思われる。小生もこの雑誌の2006.9.25号を読むまでは知らなかったので、簡単にご紹介する。
鉄筋コンクリート(RC)造で、高さ20m以上のものは「保有水平耐力の計算」が必要であったが、姉歯建築士は小規模の建物しか設計したことがなく、この規模の構造計算は未経験であった。
そのため構造計算用のソフトに手を加えて偽造に成功してしまった。その後も改ざんを重ね手口も大胆となり、、その結果9年間に99件もの偽造となったのである。
技術者としては知らないことがあったら、同業技術者に訊くなりして正規の方法で設計すべきと考えるが金稼ぎのため安易な方法を選んだようである。
「大地震はめったに来ない。その時はその時だ」と供述したそうであるが、小生の知る限りの構造設計者は「(大地震で)他の建物が倒れても、自分の設計したものは倒れてほしくない」と考えて設計しているので安心していただきたいと思う。


◆構造計算書偽造事件 ②

姉歯一級建築士による構造計算書偽造事件の続きである。
この事件は一言でいえば、レベルの低い中小関係業者の集まりが引き起こしたと言える極めて稀な事件である。
設計で手抜きをしても着工するまでにはチェックポイントが沢山あるので通常はこのようなことは考えられない。

①建築設計事務所:構造計算書のチェックは出来なくても、構造設計図には目を通している筈である。
配筋図を見れば、柱・梁の断面図に記入されている鉄筋量が他の設計と明らかに少ないのが分かる。
同じような規模の建物との鉄筋量の違い(同じサイズの鉄筋が20本が偽造設計では12本)には気が付いてほしいところである。
小規模事務所では構造設計の専門家がいないので仕方がなかったともいえるが・・・・。

②確認申請チェク機関:①と同様であるが、こちらの方が罪は重い。
毎日構造設計をチェックするのが仕事であるから、構造設計図を見ただけで、正規の計算に基づく設計図との違いが分からないようでは申請診断の資格がないと言ってよい。
専門外であるが、大学で構造の授業を受け、構造設計図も描いたのであるから、現場で配筋図も見ているので、小生でもおかしいと分かる。
この審査機関が営業停止となったのは仕方があるまい。

③デベロッパー:中小では不明であるが、大手デヴェロッパーには建築技術者が在籍している。
彼らが構造設計図を見ればおかしいと感じるし、小生のグループのデベロッパーなら小生の会社やグループのゼネコンに相談するので、おかしいことはすぐに判明する。

④施工業者:設計図がおかしいと思ってもそのまま施工するのは技術レベルが低いと言える。
大手ゼネコンの最大のメリットは、設計ミスや配慮不足を指摘してくれることである。
今回の事件では、鉄筋の職人(!)が鉄筋量が少ないと指摘していたとの事であるが、工事契約して配筋段階で指摘されても施工会社としても困ったことである。
確認申請が通っているということでそのまま目をつぶってしまったと思われる。
職人の指摘を取り上げていれば、もっと早く問題点が表に出ていたであろう。
固い話で失礼しました。

◆構造計算書偽造事件 ③(建築設備設計について)

堅苦しい話が続くが、筆者の専門技術にも関わることなので、話を続ける。
手抜き設計をしたらどうなるか?
構造の場合は大地震が来るまで設計の適否は分からない。
建築設備は大きく分けると電気・給排水・空調・換気である。
スイッチを押して電気が付かない。機械が動かないということはありえない。
水栓を回せば水は出てくるし、排水はスムーズに流れる。
工事予算に合わせるため、空調設備の熱源を小さくしたら、冷暖房が間に合わない。
建築設備は、竣工したその日から、機能テストにさらされる。
従って、設計ミスや配慮不足当等トラブルの種はあっても、手抜き設計ということはありえない。
トラブルにならないように設計したつもりでも思いがけないところでトラブルが発生するのが建築設備である。
これらのトラブルをまとめたのが「『マサカ』の話」である。


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