建築設備トラブル⑱ 現象要因別トラブル⑭

2023年09月10日

【伝播経路と騒音の増幅】音の伝播は音や振動の伝達は、騒音源との位置関係により違いがある。騒音源がすぐ近くにある場合は、受音室との関係により、上階への伝播、下階への伝播、隣室への伝播がある。離れた階に伝わる場合は隔階への伝播と考える。

離れた階に伝わる隔階伝播は、騒音源を特定するのに苦労する。コンクリート躯体は騒音・振動を伝えやすいといっても、距離減衰は存在する。途中階では聞こえないのに、騒音源から離れた階で聞こえる場合は、音を増幅させる要因がその階にあると考えてよい。壁・床・天井は取付部材により躯体と接しているので、それらの固有振動数が騒音源に合致すると床・壁・天井で増幅される。

【建築特殊構造と振動トラブル】

最近よく採用される無梁版構造の建物は、天井内に設置されるエアコンや、ファンコイルユニットの回転数と共振し、上階の居住者に不快感を与えることがある。

マンションでは、騒音伝播経路に減衰要因(小梁等、4~5db程度減衰する)がないため、水場の騒音が、離れた寝室に伝達する。

【不思議音】建築技術2006年3月号の特集「住まいの音環境とトラブル対策」の中に、『発生原因が分かりにくい音』という項がある。騒音原因のうち一般に分類できないような騒音について、同誌「不思議音分科会」(ネーミングが良い)でまとめたものであり、主な原因は、風、熱、交通騒音などである。

 風による騒音はすでに述べたが、参考のため建築関係に原因する音も上げると、手摺の風励震、グレーチング床の風きり音、アルミルーバーの励震、エキスパンションジョイントすべり材の不具合などの風の強い日に発生する事例が紹介されていた。 交差点近くでは、車発進時に大判ガラスのコインシデンス効果による騒音事例もあった。

熱関連では、サッシの熱伸縮、外壁PC板の熱収縮、型枠セパレーターの熱収縮、笠木の熱変形などによる『マサカ』の音が不思議音となる。

 設備では配管類の熱膨張や熱収縮に伴い、固定されていたり、接触している建築部材があると、音が発生する。このトラブルは冬に多い。冷たい配管に温水が流れれば、膨張量が大きいので給湯管や排水管で漏水に似たコツコツ音が発生する。我が家では、冬の朝の洗面時に温水を流すと、塩ビの排水管で音がする。寒冷地では、朝方には室温程度になっている給水管に、冷たい水が流れて収縮するため騒音源となる。これも漏水音に似ているのは困る。また、同様に寒冷地マンションで給気ダクトがある場合は、ファン運転時に冷気でダクトが収縮して音が発生するそうだ。こちらも発生パターンをつかめば原因把握は早い。

照明器具やカバーの膨張音も漏水音と似たポタポタ音となることが多く、マンションではポルターガイストとなる。音楽ホールや、会議室での照明器具収縮・膨張音については、筆者の既刊書にある。(MA)

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