建築設備トラブル㉑ 現象要因別トラブル⑰

2023年09月17日

【機能不全】ここでは、建築設備に関して、要求される機能が満足されない状況と考える。

  • 設計ミス・施工ミス・操作管理ミス

 建築設備は使われることが前提であるから、上記のミスがあれば、竣工後使用開始してからすぐに不具合が発生するが、通常は原因の特定、対応処置も早い。

使用開始後しばらくしてから発生する場合は発生原因の特定が長引き、対応が遅れることもある。上記のうちでは、施工ミスによる『マタカ』のトラブルが最も多い。

 設計ミスのうち計算ミスや機器選定ミスはそれほどないが、建築計画に伴うミスは「『マサカ』の話」の連載で紹介されているようにたくさんある。

 設備計画に伴うミスもないわけではない。設計条件の設定ミスとしては、空調設備の不適切なゾーニングはあちこちで見られるし、マンションや住宅の換気設備では給気口不足による換気量不足がある。P社の湯沸かし器による事故は筆者の見解では設計ミスの要因が大きいと考える。

大空間では上下温度差が大きくなるのは当初からわかっていて計画・設計するのであるから、クレームになるほどの場合は設計ミスともいえる。しかし、空間の形態上空調だけで対応するのは難しい場合も多くある。

給水設備の設計では意外と気を付ける必要があるのが直結方式の水圧である。高層建物の場合は低層部の水圧が高くなることは常に意識しているが、水道局の供給水圧が高く直結給水可能な地域では、低層建物でも下層階は水圧が高くなることに要注意である。減圧弁取付を忘れたウォーターハンマートラブルは設計ミスを問われるであろう。逆に、高齢者用施設の給水システムを直結方式としてシャワーの出が悪い、湯張りに時間がかかるというトラブルもきいている。

操作管理ミスも下記のように時々見られる。(具体的に)

  • 想定外の使われ方(設計条件と使用時の条件の違い)

建築・設備は使われることを前提としているから使われ方にはある程度の前提条件が想定されている。設計時点で配慮してあっても、使われ方が想定どおりでなければ、機能不全のトラブルにつながる。想定外の使われ方による『マサカ』のトラブルはたくさんあるが、ここでは要求される機能を満足できないという視点から述べる。 

各設備とも、試運転調整のうえ引き渡されているだけでなく、機器選定上の余裕率もあるので、使用条件が大きく違わない限り機能不全となることは少ない。

空調設備では、ショッピングビルのオープニング時・イベント開催時に多数の入場者が入ったり、会議室・宴会場の人員が設計条件を上回ったりしても冷房が間に合わないことは少ない。(MA)逆に中間期・暖房期の冷房要求に応えられないトラブルの方が多い。暖房期の湿度条件の不具合もここに入れてよかろう。

 筆者の経験では、VAV方式でホテルの客室の空調設備を設計したが、各室で宿泊客がVAVユニットの風量を最大としたため、全体の総風量不足で、冷房が効かないとクレームになったことがある。

 ブラインドや、カーテンを使用せずに暑いと言われたこともある。熱負荷計算にはブラインド係数が入っていることを説明した。

 ゾーニングは適切であっても、小間仕切りをされると、窓側の部屋は温度コントロールが難しくなることがある。ペリメーターレスシステムの場合もガラス面輻射熱は夏・冬ともゼロではないので同様である。社長室・役員室は窓側に配置されやすく、外資系の会社も小間仕切りされることが多い。したがって、小間仕切り対応の可否は設計条件で確認しておく必要がある。

隙間風や外気の侵入による暑さ寒さも同様である。出勤時に風除室の二重扉が閉じる暇もないほどの入館者で受付嬢の足元が寒いというクレームはよくある。

換気設備では、室内使用人員数と外気量はリンクしているから、人数が増えれば、室内のCO2濃度が上がる。CO2濃度の許容幅は大きいので、冷房不具合のようなクレームになることは少ないが、機能的に言えば室内環境基準不適合である。

 また、省エネで換気運転を取りやめたりインターバル運転としたために、排気ガス臭い地下駐車場もある。空調系統の外気量削減は省エネ項目の定番であるが、ビル管法の立ち入り検査では1000ppm近い値の物も多い。

また病院の場合は特に対応に注意が必要である。新鮮外気の導入量と汚染された排気量とのバランスにより、院内感染を防止しているのであるから、バランスを崩したら危険である。最近は院内感染のニュースを目にすると、省エネの為外気量の削減をしていないのかが気になる。

 厨房換気用の外気供給設備は、冷暖房装置(特に暖房)が組込まれていないと、冬季に冷たい空気が吹出され、寒いので運転されないことがある。そのため玄関扉からの外気を吸込み、客席での寒さや音のトラブルとなる。これも想定外ともいえるが、厨房内の環境をどのように考えておくかという設備計画の配慮不足(計画条件設定ミス?)であろう。

給水・給湯設備は、経験に基づく使用率工学ともいえるので、使われ方による給湯用貯湯槽の容量不足トラブルはあちこちで発生している。(MA)水槽類の警報も想定外の使用によることが多い。

 電気設備でも、ホテルオープン時などで全負荷をかけられて、ブレーカーが落ちた事例もある。

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