建築設備トラブル㉒ 現象要因別トラブル⑱
- 誤操作・操作ミス
これも想定外の使われ方に含まれるかもしれないが上記とは別項目とする。日常業務での具体的な事例は筆者の耳に届くことは少ないのであげないが、管理の方々は時々遭遇されていることと思われる。
機器類の運転・操作手順のうち重要なものに関しては、操作手順書が作られていることが多い。セントラル方式のショッピングビルでは、ガス冷温水機によるインターロック回路を設けて操作ミスによる事故や無駄運転を防ぐ対策としている。
操作ミスではないが、メンテナンスや改修工事の際のドレン管水抜きバルブの操作は、予想外の箇所での漏水・溢水に繋がるので要注意である。
また寒冷地での凍結防止手順でも、使用時に水抜き水栓を閉め忘れてトラブルになる。「設備と管理」誌2013年3月号の情報『キャッチアップ』欄にも投稿があった。
- 設定・調整変更
建築設備には、機器・装置をはじめとしてシステムの各所に設備機能維持のために、センサー・設定装置・部品が取り付けられている。これらの設定値は竣工時点では設計条件・使用条件に合わせて決められているが、その後必要に応じて調整・変更される。また、トラブルやクレームにより適宜変えられることもある。バルブやダンパー類も同様で、元栓やダンパーを絞って別なクレームとなった例は時々耳にする。
これらの設定変更状況は、施工業者やメーカーのサービスマン任せにせず、常に把握しておく必要がある。当初は具合が良くても、その後の状況の変化により、設定変更が原因の別のトラブル発生の恐れがあるからである。暖房時に暑いと言われてメインダンパーで風量を絞ったため、夏に冷房が利かなかった事例は紹介した。何度も調査してエアコンの増設案まで出たが、実際の原因が分かったのは筆者が出席した夏の終わり頃の現地での会議であった。このように状況把握が不十分であると、トラブル原因究明が遅れる。(MA)
空調設備の場合は冷房時・暖房時で自動制御の作動が逆となり、設定温度も異なる。昔のセントラル方式では、一つのサーモスタットで制御を行っていたので、冷暖切り替えや温度設定変更に伴うトラブルが多かった。
機能的には完全なものでなくとも、運転/停止、冷暖切り替えや温度設定が使用者の手元で行える個別システムが、多くの建物で採用されているのは当然である。
設定変更というより、「安全装置解除」事例がP社のガス湯沸かし事故である。安全回路のリレー端子のはんだ割れによるガス湯温水機の運転停止に対処するため、燃焼制御回路の不正改造(短絡配線)を行ったため、排気ファンが運転されなくても温水機が運転され事故に至ったものであるが、当初の設定を下手にいじるとトラブルから事故に繋がる典型的な事例である。これは「続・失敗百選」(中尾正之著、森北出版)に詳しく書かれていた。この書は「失敗百選」とあわせ、トラブル防止に関心ある方の必読書といえる。