建築設備トラブル㉕ 現象要因別トラブル㉑

2023年09月28日

コラムで拙宅の浴室椀トラップの錆瘤についてお話ししたように、長い年月をかけての機能低下はなかなか目につかない。

しかし割合短期間に機能低下するものがある。空調機エアフィルターの目詰まりによる風量低下がこれであるが、これは必ずしも空調能力の低下やトラブルにはつながらない。冷温水コイルの選定には余裕があるので、風量低下に伴い冷房時には吹出し温度が下がるだけで冷却能力には大きな変わりはない。暖房能力も同様である。外気をこの空調機から送風している場合は、送風量低下に伴いCO2濃度が若干上がるであろうが許容範囲ではないだろうか?

なお、いろいろなところから出ている省エネチューニングの項目に「空調機エアフィルターの清掃」が挙げられているがこれはあまり意味がない。エアフィルターの目詰まりは風量ダンパーを絞るのと同じであるから、送風量の低下となり、送風機動力は低下する。したがってエアフィルターの清掃は実質的には低下した動力量が元に戻ることであって、省エネには関係ない。勿論エアフィルターの清掃をしなくても良いというわけではないが・・・。

「蛍光灯の清掃」も省エネ項目に入っている。照度保障機能が付いている場合は別として、一般的な照明器具は清掃すれば照度は上がるが、エネルギー消費量に変化がないのは当然である。

 エアフィルターのつまりは、設備の点検項目であるから管理上の落ちはないが、給排気口やダクトの途中に取り付けられているメッシュやパンチングメタル・穴あき整流板などの目詰まりには気が付かないことが多い。図示されていないこともあり、気が付いたときは『マサカ』のトラブルになる。(MA)ダンパーやシャッターにも汚れは付くが、これによる機能低下はきいていない。吸い込み口がきれいに清掃してあっても、よく見ると内側のシャッターにごみが付いている事例も多いがこの汚れによる機能低下も同様である。

フィルターの汚れによる機能低下が大きいのはレンジフードのグリスフィルターである。初期のレンジフードにはグリスフィルターがなかったが、40年近く前の某高級アパートの設計ではグリスフィルター付きの物を採用した。竣工後数年して排気が悪いと言われて見に行ったら、フィルターは真っ黒であった。「掃除してください」と言ったら「どこにお願いするんですか」と訊かれた。「奥さんがやってください」と答えたが、当時は家庭ではグリスフィルターの清掃など奥さんの仕事とは考えられていなかったようである。

 水配管系にはストレーナがあるが、給排気系のフィルターに比べ、目詰まりによる流水量低下に伴う機能障害はあまり耳にしていない。但し、メンテナンスをおろそかにすると、メッシュが破れて蓄積されたゴミが流出する。結果として自動制御弁の作動不良につながる。

 配管系に取り付けるストレーナはゴミ溜まりスペースがあるが、湯沸し器や器具、水栓に取り付けられるメッシュ状のものは給水接続部に水流に直角に取り付けられることが多い。従って、通常の清水が流れている場合は良いが、竣工時のゴミや水道工事などのゴミが付着すると、機能低下を待つことなく機能障害を引き起こすことが多い。水量・湯量不足の機能障害には、ストレーナのつまりを疑ったらよい。

【想定外の操作その他】

やってはいけない操作で機能障害を引き起こすこともあると思われるが、すぐに直されるであろうから、表に出る事例は少ない。ブレーカを落としてあったり、ヒューズが抜いてあったりして、機械が動かないというクレームはあった。その他の事例で多いのは、ゴミ噛みによる機能障害である。フート弁のゴミ詰まりによるポンプの揚水・排水不能、ボールタップ不停止による受水槽類の溢水、大便器ロータンクや小便器フラッシュ弁の不停止による水の流れっぱなしだけでなく、減圧弁、安全弁等の不具合もフラッシング不足による残留ゴミのせいであることが多い。排水管のつまりの原因となることもある。

 排水管端末のプラグ止め忘れによる排水の流出は、筆者の会社でも経験があるが類書にも多く載っている。再発防止にはきちんと排水管の満水テストを行うことが必要である。

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