建築設備トラブル㉖ 現象要因別トラブル㉒
6.損傷・変形・腐食トラブル
設備関連の機器・部品・部材類は、長い使用期間の間には損傷・腐食などで機能障害が発生し、設備トラブルの原因となる。
・損 傷
:損傷はその程度により、汚れ、汚損、破損、焼損、変形、破壊などの状況がある。
汚れや汚損は通常は機能障害に至ることは少ない。建物の内外装の表面に設置される器具類の変形や汚れは通常はクレームの原因となるので傷物が設置されることはない。しかし、竣工後使用してから汚れや傷が発生するものがある。
マンションベントキャップや外壁設置の排水通気口は、結露に伴う汚垂れにより汚損することがあるがこれはクレームの対象となる。水滴落下についてはいうまでもない。
設備の損傷事故は大きな災害や水害以外にはあまり聞かないが、工事中、納品前には損傷事故は時々ある。昔は和風大便器の事故が多かった。上から物が落ちて傷ついたり、トラップ部分が壊れてやりかえるなど養生に注意が必要であった。
機器類の搬入・揚重・据付時は要注意であり、気を付けないとどこかにぶつけて損傷・変形事故となる。グラスウールダクトでは、乗られて壊されたり、乗った者が落ちてけがをすることがある。
工事中も竣工後も注意が必要なのは、スプリンクラーヘッドの損傷である。工事中でも、運搬・保管の際に衝撃を与えない、直射日光やストーブのそばに放置しない、作業中に落としたヘッドは使用しないなどの注意事項がある。しかし竣工後は、内装工事でヘッドに衝撃を与えたり、商業ビルで大きなものや長い商品の先端をスプリンクラーヘッドにぶつけたりして撥水させることはよくある。筆者のきいている事例では、何かの拍子で撥水したスプリンクラーを、売場の店員が指で止めようとしてびしょ濡れになったが、後日会社から表彰されたという話もある。以前からスプリンクラーヘッドはカバー付となっている。
超高層ビルではスプリンクラーの設置が義務付けられている。サーバー室などは気体の消火設備とすることはあるが、一般事務室のパソコン端末でも水に濡れると問題である。。本項のテーマではないが、スプリンクラーヘッド誤作動時の対応(危機管理)については気になるところである。アラーム弁が設置してあるシャフトに鍵が掛かっていたら、誤作動時に事故は大きくなる。
破損以上の損傷の場合は、機能障害だけでなく、人身事故につながるのが怖い。
ピット内に流入した雨水のためガス爆発事故となった『マサカ』の話を見つけたので紹介する。建物は、建築設計の賞を取得した低層の集合住宅であったが、建設地は水はけの悪い土地であった。湧水が地下ピットに入って1階住戸が湿気るので、対策としてスタイロフォーム板をピット内に敷き詰めた。(この対策も一寸疑問である)それでも湿気が抜けないので地下ピットの梁に穴をあけて通気口とした。集中豪雨時にここから雨水が侵入した。この雨水によりスタイロフォームが浮き上がり、ピット内ガス管を押し上げて配管に隙間が生じ、もれたガスが爆発して死者が出るほどの事故となったのである。浮力が働いたとはいえ信じられない事故といえる。
地下ピット内のガス配管の腐食の話はこれ以外にもあるので後述する。
破壊事例は、学校施設や公共施設に多い。