建築設備トラブル㉙ 現象要因別トラブル㉕
<その他の破壊事例>
いたずら事故ではないが、機械室床に設置された、排水槽電極棒保持器が蹴飛ばされ、ぐらつきによる機能不全事例は類書にあった。
珍しい破壊事故では工事中にFRP製の丸型タンクを屋上に上げて、吊下げたまま昼食のため作業員が離れていた間に突風のため地上に落下して破壊したという事例が35年以上前のトラブル本に紹介されていた。
・熱による破壊
設備関係の会社の名前に「熱」の字が入る会社もあるほどであるから、建築設備に熱はつきものである。
熱による膨張・収縮の応力が材料の破壊応力を上回れないように、伸縮継手が用いられている。昔の蒸気暖房では枝管は必ずオフセットを行っていた。
通常は施工時に配慮されており、配管類の熱膨張・熱収縮による破壊は漏水事故につながるのですぐ修復され、設計者の耳に届くことは少ないが、この手のトラブルは類書にたくさん紹介されている。
ホテル客室の配管シャフト内で、ファンコイルユニットの枝管の壁貫通部が消防の1年検査時点の指摘でモルタル固定され、蒸気の温調弁の故障により温水温度が上昇して、冷温水配管の主管が膨張し、枝管が破断したという『マサカ』の事例は第15話「洩れたら怖い蒸気のコイル」(2002年1月号)でお話しした。
給湯管は熱伸縮が大きいのでこの繰り返しによる破断事故が多い。特に被覆銅管は施工性が良いのでマンションでは良く使われるが、変形の多い床転がし配管の交差部分や、支持金物で拘束される部分での熱伸縮疲労による亀裂が多い。
熱膨張率が大きく使用温度に制限があるのが塩化ビニル管であるが、これの膨張・収縮による破壊トラブルも多い。マンションでは塩ビ管は給水配管・排水配管に用いられることが多いが、排水管の熱膨張に配慮がなく、上下を固定されて共用竪管が熱膨張で破断したり、高温排水で変形したりした事例は類書に多く紹介されている。
(コラム)
<給湯配管の一部に塩ビ管を使用して無事故>
某マンションでユニットバス部分の給湯配管を誤って塩ビ管に接続使用していたが、入居者が浴室のリニューアルをするまで支障なく使っていたという珍しい事例があるのでご紹介する。当初の設計は、ガス給湯機からユニットバスまでの給湯配管は被覆銅管で、ユニットバス内の給湯配管も被覆銅管であった。しかしユニットバスの配管接続部分が給水・給湯同じ形であったので配管をつなぎ間違え、ユニットバス内の給湯は本来給水用であった塩ビ管を流れることとなった。当然水栓のところでは湯水が逆となるが、そこは点検口から配管のつなぎなおしを行った。20年近く経ってから、入居者の方がユニットバスをリニューアルすることになり、配管間違いが発見された。特にトラブルになっていたわけではないが、間違いは間違いである。全住戸取替えとなった。
ガス給湯機の出口で60℃以上にはならなかったとはいえ、塩ビ管を給湯配管に用いて20年近くも問題なかったのも『マサカ』であろうか。