建築設備トラブル㉚ 現象要因別トラブル㉖

2023年10月13日

熱応力には収縮によるものもある。

夏期に施工した、外壁に立ち下げた雨排水用塩ビ管が、雪解け水で収縮して破断した事例は類書にある。

凍結事故では、屋外に設置の膨張タンクへの膨張管が、断熱をしなかったため凍結し、加熱時に膨張圧力の逃げ場がなくなり、温水ボイラの熔接部に亀裂が入った事故がある。膨張管内は暖かいので凍結の心配はしなかったのであろうが、断熱をしないと熱ロスは大きい。単管式暖房方式のように、膨張管内でも、ボイラで熱せられた温水と、膨張配管や膨張タンク内で冷やされた低温水が上下するので、無駄運転となる。寒冷地でなくても、膨張管は断熱すべきであろう。筆者の凍結事例は、駐車場ビルでの感知ヘッドの凍結である。「風に深れりゃ温度が下がる」事例である。

塩ビ管膨張による珍しい事故では、貯湯槽の検査の際に、70℃!(レジオネラ対策のために使用者が設定変更)の温水を連続排水し、屋外排水埋設のVP管が排水枡接続箇所で破損した事例が(公社)空衛工学会ホームページの<「建築設備のトラブルに学ぶ」の公開>にある。

塩ビ管の膨張・収縮は破断事故以外にも、騒音トラブルとなることがよくある。配管が固定金具や建築部材に接していると、配管の膨張・収縮に伴いコツコツ音・ポタポタ音のトラブルとなる。

    ・有機溶剤による塩ビ管の亀裂、破断

    • ソルベントクラッキングによるもの:配管内に残った接着材による侵食が、ポンプ運転時に繰返し応力を受け亀裂が発生。
    • 建築根太の防腐剤(クレオソート)による亀裂
    • 病院検査室で、流してはいけない薬品(エーテルなど)を流し、塩ビ管が変色、軟化し、吊り金物間で垂れて破損した。
    • 廃材置場で有機溶剤が流出して地面にしみこみ、地中の給水塩ビ管を膨潤・軟化し内圧により破損。似たような事例では、塗装業者が塗料と溶剤の調合を行って地中に捨てたために発生した事例もある。

    最後の2事例は『マサカ』といえるであろう。

    これらのケースは腐食を原因とするトラブルとも言えるが、ここでは塩ビ配管の亀裂・破損という面でまとめて取り上げた。これらのケースでのトラブルにいたる流れは、施工ミス・取り扱いミス⇒塩ビ配管の損傷⇒内部応力による破損⇒漏水となっている。このように、最終的なトラブル現象は漏水であっても、原因は輻輳化していて特定が難しいのが設備トラブルの特徴とも言える。これについては別に項を改めて述べる。

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