建築設備トラブル㉛ 現象要因別トラブル㉗
・圧力変動・振動による破壊
ポンプやボールタップなど頻繁にON-OFF、開閉を繰り返す機器類には、大きな圧力変動が生じるので防振継ぎ手が取り付けられる。しかしその取り付け位置を間違えたり、取り付け方法や支持が不適切であると破壊事故が生じる。
類書に紹介されているものでは、防振継手の破壊事例が多いがその一部をご紹介する。
- ポンプ締切り運転および、全流量バイパス運転によるゴム製フレキシブル継ぎ手の破損。・
- 防振継手の上下の配管との芯ずれにより破損。
- ゴム製防振継手が、ポンプ出口のチャッキバルブの上に取り付けられていたため、ポンプ停止時の圧力を受けて破損。
- ゴムフレキにフランジ止めのボルトが当たり、ポンプのオンオフのたびにこすれて破損。
等々の事例がある。最初の事例は、締め切り運転に伴う水温の上昇によるゴムフレキの破損という『マサカ』の話である。興味ある方は空衛学会のホームページを参照されたい。最後の事例もビル管理者が気がつかなかったのか疑問である。
ポンプ廻りだけでなく、受水槽、補給水槽などでボールタップが締め切る際の振動により、この配管に設置されたステンレスフレキが破損した事例もある。
ウオーターハンマーも配管系や器具の破壊につながるが、異常音に対してウオーターハンマー防止装置を取り付けるなどの対策が早めに行われるので、大きな事故は少ない。
昼間と夜間の給水圧の差が大きく、夜間給水時のウオーターハンマーにより75φの量水器が破裂し、機械室・電気室が水浸しになった事例は昔の日本設備士協会(現(一社)建築設備技術者協会)のトラブル事例集にあった。
Y型ストレーナの金網部の破損は以前に述べたが、本体の破損・漏水事故もある。鉄くずがストレーナ低部で踊り、蓋の部分を磨耗させた漏水事故も類書にある。
破損事故ではないが、ヘッダー内部で音がするので調べたら、内部にボルトナットが入っており、ポンプ運転時にヘッダー内で回転していたようで、内部が溝状に削られていた事例もきいている。
ゴムフレキの破損対策として、筆者が定年退職後にお手伝いした病院の工事監理では、熱源機械室のポンプ近くに、床に600角の格子枡を設置して、事故発生時には漏水を地下ピットに落とし込むこととした。
ボイラの低温腐食による温水ボイラの缶体の亀裂漏水事故もある。いずれも給湯用ボイラで、直接給湯方式でボイラに給水される配管となっていたため、事故となった。貯湯槽設置の場合でも貯湯槽に給水せずに、ボイラに給水管が接続され、セクショナルボイラの低部に亀裂が入った。
また、貯湯槽への給水の場合でも、給水のタッピング位置が、給湯出口管の近くにあり、膨張・収縮でライニングが剥がれ、鉄錆による赤水トラブルとなった事例もある。
マンションのトイレで、耐火2層管の排水管と給水管(HIVP)が交差し、使用時の床の下がりで、給水管が圧迫され亀裂を生じた事例も、繰り返し荷重によるものといえよう。
目に見えない破損事故は、水回りの土間コン下の配管や、屋外地中埋設内配管の事故である。『マタカ』といわれるほどの事例は多く、施工に際しては各社とも気を付けているが、目に見えない範囲でのこと、長期的には地盤沈下で事故が起きるのもやむを得ないと思われる。従って、地中埋め戻し配管上の土間コンクリート仕上げは絶対やってはいけない。最低でも土間スラブとして、床の変位や床下の地盤沈下が配管に影響を与えないようにしなければならない。筆者は地中ピットがない場合でも、一階水回りの床と外部までの配管ルートには必ずピットを作ってもらっていた。
一般マンションの床下配管ルートでも、建築の設計マネージャーは、スラブ下スペースは取ってあげるから、「ピットにするのは金がかかるからいやだと」いうのに対し、「メンテナンスに入るたびに配管屋が泥だらけになるじゃないか、そんなかわいそうなことはしないでくれ」と説得した。
その他埋設管の破損では、マクロセル腐食による漏水事故がある。せっかく防食対応の施工をしていても、埋め戻しの際の砕石で傷ついたり、竣工後の重量車両の圧力で傷ついた例もある。
また屋外会所枡の低部が抜けた事例もある。
熱膨張による変形・破断事例に紹介漏れがあった。初期の厨房シンクにはトラップが付属品とはなっていなかった。したがって、現場でフレキ管や、塩ビ管でトラップを構成していた。これが厨房の熱排水で変形したという事例である。