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2023年10月19日

(7)腐食によるトラブル

建築設備に使われる機器類や部材は、設置される環境や内部に流れる水や空気により、それらを構成する材料に何らかの影響を受ける。影響の程度によっては腐食が発生し、時間の経過とともに進行する。設置される環境は、空気中、水中、土中、躯体中などであるが、空気中以外は腐食の進行は目につかない。同様に水の流れる配管や機器類内部の状況も簡単には人目に付かない。ある日突然漏水が発生したり、バルブを閉めようとしても止まらなかったりと大きなトラブルが発生して、読者の皆さんが迷惑をこうむっている。

腐食に関しては、その原因や対策について、専門家の方々の研究に基づく著書や、空衛工学会誌をはじめとする技術誌の特集や連載などで取り上げられているが、ここでは、単に腐食に伴うトラブルについて取り上げることとする。

腐食によるトラブル事例の紹介で面白いのは、昔のトラブル集に事例紹介の少ないことである。

昭和53(1978)年8月8日付けの、日本建築設備士協会でまとめた「給排水設備トラブル事例対策集」には、腐食に関する事例を殆んど扱っていない理由として、「これは腐食の多くが複合因子によって発生し、個別事例においてそれらの原因究明に理論上、究明の実施上で万全を期せず、原因を推測の域を出ないことが多く、対策も決め手を書くという現状によるものであることをご理解願いたいと思う」とある。戦後まもなく建設された建物でも30年経っていない状況では、特別な場合以外は腐食が原因であるとはっきり言える事例はまだ少なかったものと考えられる。最近のトラブル本では、「腐食」の項目が独立しており、事例が多くなって、原因究明がきちんとされるようになったことを示しているものといえる。

・給水・給湯配管からの赤錆・赤水トラブル

 腐食に関するトラブルで最も多いのが、赤錆とそれに付随するトラブルである。昔の給水設備の配管は白ガス管主体であったので、赤錆は発生しやすかったといえる。特に初期のセントラル給湯設備では、給湯配管にも白ガス管を使っており、(今の方からは『マサカ』でしょうね)赤錆どころか、湯量の減少、配管の穴あきなどのトラブルで銅管に取って代わられた。その後も、貯湯槽出口の給湯本管のバルブが鋳鉄製であったため、残留塩素や酸素による赤錆トラブル事例が昔のトラブル本にある。

貯湯槽本体もタールエポキシ塗装では、内面腐食を防ぐのは難しいので、ステンレス製に材質変更されている。計器類タッピングの腐食もある。

家庭用の給湯設備では、電気温水器の赤錆・赤水トラブルがある。グラスライニングの破損や、防食用マグネシウム陽極棒を交換していなかったのが原因であるが、その他には給水側が白ガス管で給湯側が銅管という異種金属接続部の絶縁継ぎ手の選定が不適切な事例もあった。

中央式給湯方式の銅管の腐食には、潰蝕、孔蝕があるが、ホテルで客室と1階厨房系統とに配管系統を分けたため、給湯循環水が手近な厨房系統に多く流れ、こちらの配管だけに潰蝕を発生させたこともある。

給湯から話を始めたが、もちろん給水配管の赤錆・赤水トラブル事例はたくさんある。

 水栓器具類の取り付けに用いる持ち出しソケットは現在は黄銅鍛造品のものがあるが、以前は鉄製のニップルとソケットを組み合わせて使用している事例が多く、ここが赤錆の発生源となっていることが多かった。また、絶縁継ぎ手に鉄製ユニオンを使用して赤水が発生し、ホテル客室でお湯を沸かし煎茶パックに注いだら、水が紫色に変色したトラブル事例は類書にあった。

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