建築設備トラブル㉞ 現象要因別トラブル㉚
・空気内の異物による腐食
建材や接着剤に含まれる、ホルムアルデヒドが人体に悪影響を及ぼすことはよく知られているが、除湿機にまで孔をあけた事例などは飛び切りの『マサカ』の話もある(MA)
塩素ガスも金属腐食を引き起こす。特にプール関係に多い。プール排気設備の鉄板製ダクトや排風機の腐食事例はたくさんある。天井内を第三種換気としたため、天井内にプールの空気が吸い込まれ、天井吊りボルトが腐食して天井が落下した事例もある。建築雑誌でプール天井の落下事故の報告を目にするたびに、換気設備はどうなっていたか気になるが、これについて報告されることは余りない。
ステンレスフレキ管が塩素ガスに侵された事例もある。給水引込み管のボールタップ手前の横管に取り付けたため、配管内部の塩素ガスで腐食したものである。また、加圧給水ポンプから受水槽までの圧力防止用の戻り管に使用したステンレス管が腐食した事例もある。いずれも配管(フレキ管)内に残った水に、受水槽内で気化した塩素が溶け込み孔蝕が発生したものである。
その他、海の近くでは塩化物イオン、工場地帯での、硫黄酸化物や窒素酸化物、排気ガス中の窒素酸化物が金属腐食に関係する。すし屋や工場、薬品倉庫などで蟻酸・酢酸による蟻の巣状腐食が発生する。上記の除湿機の穴あきがこれである。
・機器類のフショク
機器類の腐食では、ボイラの低温腐食がよく知られている。吸収式冷凍機では冷媒自体の腐食性が大きく、当初から防食材が投入されている、空調機ではコイルのフィンやドレンパンの腐食がある。
・地下ピット内でガス配管の腐食
漏れると危険なのが都市ガスやプロパンガスである。従って微量な漏洩でも気が付くような臭気がつけられている。ガス漏れ事故はなかったわけではないだろうが、筆者が現役時代に経験したのは下記の一件であった。某マンションで貯湯式湯沸し器の安全弁が不良で、水(湯)が地下ピットに溜まった。地下ピット内を展開しているガス配管がこの水に浸かり腐食が進行しガス漏れとなったものである。排水ポンプの故障もあったのかもしれない。
地下ピット内のガス配管の腐食事例では、上記と同様にピット内に流入した雨水のためガス爆発事故となった『マサカ』の話は〇ページに紹介した。
・その他の材料の腐食と劣化
金属や無機の材料と比べて、ゴムやプラスチック系の材料は経年変化に伴い劣化しやすい。空気や水などの自然環境に長期間さらされると、各種の劣化因子により影響を受ける。樹脂系の配管材の熱や紫外線による劣化はよく知られている。
合成ゴム系の材料劣化の場合は、給水・給湯系では黒鉛の流出がトラブルの原因となる。もちろん劣化が進めば漏水トラブルにつながる。
建築設備の器具・部品・部材にはいろいろなものが使われているが、劣化に伴う具体的な各種トラブルは設計者の耳に届くことは少ない。
以上トラブル現象について述べてきた。落ちもあるかもしれないが、このあたりで締めとしたい。