建築設備トラブル概論⑯ 現象要因別トラブル⑫
2023年09月05日
(4)騒音・振動トラブル
騒音トラブルは設備の3大トラブルの一つであるが、設備だけでなく、建築的な原因によるトラブルも多い。設備関係の物だけではないが騒音トラブルだけで結露と同じように1冊の本が出来ているほどである。(「建築と音のトラブル」学芸出版社。これは大変参考になる。良書である。)
【建築計画トラブルとしての側面】
建築設備が機能するためには、騒音・振動の源となる機器類の運転が必要である。また、エネルギーや流体の搬送のための配管やダクトも騒音・振動の伝達経路となる。したがって建築計画の当初から、これら騒音源は生活空間からは離れて設置されることが必要である。また、騒音源を囲む建築の構造も、音の透過・伝達を防いだり、増幅させないようなものとする必要がある。建築計画で配慮不足があった場合は、設備側での防音・防振対策で完全に対応することは難しい。騒音・振動トラブルは、エンジニアリングトラブルととらえずに建築計画トラブルととらえるべきである。
【騒音・振動源】騒音源、振動源には以下のようなものがあげられる。設備以外のものもあげた。
騒音源のある室や施設の配置に関しては、建物用途に応じて配慮することが必要である。
- 室及び施設:厨房、大浴場、浴室、特殊風呂、室内プール、浄化槽・除害施設等の水処理施設、水景施設、トレーニングルーム、体育室、カラオケ室・遊戯室・麻雀室等ホテルの娯楽室、実験装置、工場の機器類、煙突。
- 機器類運転音:以下にあげるように多種・多様であるが、運転時間にも関係がある。特に24時間運転されたり、深夜のみに運転される機器類は周囲の暗騒音が低くなることにより、音が聞こえやすくなるので要注意である。具体的には、空調設備機器(熱源機器、ファン・ポンプ・空調機・エアコン類)、冷凍設備機器(特に屋外機)、衛生設備機器(ポンプ、給湯用温水器、ガス湯沸かし器)、電気設備機器(発電機、受変電機器)、エレベーター、機械式立体駐車機、機械式地下駐車機、シャッター、自動扉などが騒音源である。
- 作動音:機器以外の設備関係部材の作動音もある。電材もリレーやインバーターなど音の出るものがある。具体的にはウォーターハンマー、スチームハンマー、チャッキバルブ・ダンパー類の作動音などがある。
- 流水音:配管類を流れるものは、上水、給湯用温水、排水、雨水、冷温水、冷却水、蒸気等である。配管類は生活空間の近くに設置されるので、配管類の防音・防振対策と、配管シャフトの構造及び配置計画は重要である。
- 風切音:建物内部で発生するのは吹出し口からのものが多いが、通常は吹出し口の選定と風量調節が適切であれば問題ない。ガラリから外部への風切音は、室内側スペースに関係がある。ファンルームやシャフトが狭い場合は、ダクトとガラリがスムーズに接続できずに編流が生じてその部分の風速が上がり風切音が発生する。設備施工各社のトラブル集にある、「やってはいけない」ダクト接続事例がこれに該当する。建築設計のスペース計画では、設備計画者は騒音トラブルが発生しないような施工が出来るよう、スペース確保に心掛ける必要がある。筆者の経験では、リゾートホテル最上階の機械室が、屋根が掛かっているため十分な消音スペースが取れなかったことがある。(MA)
なお、風切音では、避雷針やテレビアンテナが騒音源となる。搭屋のない建物では、避雷針は屋上スラブの上でなく、柱や大梁上に設置することが必要である。
建築的には、手すりや機器類目隠しガラリ、突出物が風による騒音源となることが多い。
- 生活音、作業音:マンションでの隣接住戸からの生活音がトラブルとなっているのはよく知られている、建築構造の軽量化に伴い一般ビルでも食堂や事務所階での椅子の引きずり音が問題となっている。