建築設備トラブル概要⑭ 現象要因別トラブル⑩

2023年09月01日

【温 度】ビル管法では17℃~28℃とするように規定されている。したがって、余程の特殊ケースでない限りこの規定の遵守は容易である。しかしその割にはクレームは多い。

温度だけの要因でのトラブルはほとんどないといっても良いが、暑い・寒いという感覚的なものが絡むとクレームになる。しかも感覚的なものであるから、発言力の大きさがクレームに関係してくるのが困る。「あの方が暑いと言ったら暑いんだ」などに類する話はよくある。上記温度条件というより設計条件に適合しない場合がトラブルであるが、原因はたくさんあって複雑である。温度感覚に影響する要因としては、体質、体調、被服係数を別として気流と輻射熱が上げられる。

【湿 度】許容幅が40~80%であるから、適合幅は大きいように見えるが、東京都の立ち入り検査による空気環境測定データでは、ビル管法の規制項目中での不適合率がダントツで高い。しかし、湿度に関するクレームは温度と比べると非常に少ない。これは感覚的に人間の許容幅が大きいためと思われる。湿度に関するトラブルは過乾燥以外にはあまり聞かないが、結露が発生すると状況によってはトラブルになることがある。冬の結露は、ある程度やむを得ないとの共通のコンセンサスがあるが、結露して良いわけではない。

換気口位置が不適切であったため、4月末から7月中旬まで毎朝、寝室の窓にべったり結露してトラブルになったマンション事例がある。(MA)

【気 流】同じ気流があっても、冷房時/暖房時で感じ方が違うのが困る。設備工事会社時代の経験では、このトラブルで呼び出されたことが最も多かったような記憶がある。冷房時・暖房時では、暖房時のクレームのほうが多い。

小規模ビルでは、カセット型室内機のドラフト不具合は、吹出し口の閉塞、ガムテープによる風向板の固定や、特殊な風向板取付などを取付けなどで対応しているのがあちこちの建物でみられる。

【塵埃量】喫煙の禁止傾向によりこの項目の不適合率は大幅に低下している。

【CO2濃度・CO濃度】第104話に詳しく述べた。-引用すること

いずれも取り入れ外気との関係が大きいので、ガラリ位置には配慮が必要である。駐車場排気の室内混入は、以前の空衛学会誌に指摘されているが、地下駐車場のエレベーターロビーでは空気圧が負圧にならないように注意が必要である。建物の玄関も要注意である。1階のエントランスでも、来客や役員を待機中の車の排気口が玄関に向かっていると扉の隙間から排気ガスが玄関に侵入する。

『マサカ』事例としては、外気取り入れシャフトの奥に煙突が配置されたビルで、煙突の点検扉から、熱源機の排気ガスが空調機に吸引された事例がある。

CO2は外気の濃度が高いところでは取り入れ外気量は建築基準法の規定より増やす必要があるし、CO濃度は燃焼器具の不完全燃焼が要注意である。

【ホルムアルデヒド】平成15年の改正で建物環境の管理項目に追加された。ビル管法上でのこの項の実態については、役所の立ち入り検査での不適合事例は極めて少ない。―確認のこと

マンションでのクレームは、トラブル相談のホームページに時々ある。学校でのトラブル事例は日経アーキテクチュアに載ることがある。

【その他の危険なガスや有毒物を含む空気】

有毒ガスや引火性、爆発性のガスの存在は、各種の規制がある。通常危険性を処置の上排出されるか、通気管などにより大気に開放され、居住域には存在は許されない。

爆発性のガスが漏洩の恐れのある場合は、室内の電気のスイッチを防爆型とし、ガス感知器で警報を出すような処置を行う。渋谷のスパでの爆発事故では、このような処置が取られていなかったようである。

病原菌も居住区間での存在は許されないので、病院設備では汚染空気の流れに留意した設計がなされている。

Copyright © 2019-2020  建築設備解体新書 All Rights Reserved.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう