建築設備トラブル概要⑮ 現象要因別トラブル⑪
(3)臭気のトラブル
一般に建物や施設内で発生する臭気の源は、厨房、便所、浄化槽、水処理施設である。工場や学校、特殊施設では局所的又は全体的に臭気発生源がある。臭気は基本的には不快なものであり健康に良いわけではないから、設備計画時に配慮が必要である。
- 空調・換気関係の臭気
排気ガスや厨房排気は、当該建物や隣接した建物に影響のないように排出される。自己の排気や、他者の排気がショートサーキットして給気側へ回り込むと、室内に臭気が流れてトラブルとなる。発生源は決まっており、対応策も明快であるから、通常は建築計画時点での対策でおおむね予防可能である。外気の取入れ口は近隣建物の排気口の位置に注意が必要である。この種のトラブルは発生すれば典型的な建築計画トラブルであるといえる。特にマンションでは厨房排気の他の住戸への回り込みトラブルが多い。
- 排水設備の臭気
排水設備のトラップ封水切れは機能不全である。
排水管通気口位置も開口部からの離隔距離が建築基準法に定められているが、マンションでは風向きにより臭気トラブルが発生するため、通気管は屋上に立ち上げる。このことを知らずにバルコニーに通気口を設置しクレームになった事例が110番に紹介されていた。この時の事業者側の対応が「そのうち慣れます」という回答であったので、通気弁の設置をアドヴァイスしたが、このようなことすら知らない設計者、事業者がいるのは問題である。(施工屋も同罪か?)
最近のマンションでは気密度が上がっているので、ワンルームマンションでは、給気口不足のために、排水トラップの封水切れの為、臭気が排水トラップから逆流する事例が110番の相談事例に数件あった。筆者にもコンサルタント事例がある。
- たばこの煙
オフィスビルでは喫煙室が設けられているが、配置や給排気設備に配慮しないと、人の出入り時に事務室に煙が流れる。屋外を喫煙所としたが、その上部に外気取入口があったという笑えない話もある。マンションでは排気が上下や隣の住戸に流れるというトラブルが多かったが、最近では高気密化の影響で、火災報知器からとなりの臭気を吸引するというトラブル相談があるが現地は確認していない。