建築設備トラブル概論         4.品質管理と設備トラブル①

2023年06月10日

4.品質管理と設備トラブル

工業生産品としての建築設備について、トラブルとの関係を述べると、問題は一般の工業生産品と比べてトラブル発生が非常に多いことである。「設備と管理」誌の連載では、「マサカ」のトラブル事例について取り上げているが、裏を返せば「マタカ」のトラブルは一般的すぎて、連載の話題としては面白くないということにもなる。ともあれ、トラブル・不具合が発生するということは、製品の品質管理が行き届かないということである。

4.1 製造業に於ける品質管理

 品質管理の考え方がわが国に導入されたのは、1950年ごろであるが、1960年代の貿易自由化の流れの中で、国際的な品質要求に対応できるように、多くの企業において品質管理の活動が取り入れられた。

これが日本独自の品質管理活動であるTQC(Total Quality Control)である。TQCがわが国の工業製品の品質向上に果たした役割は大きく、現在ではメイド・イン・ジャパンは高品質の代名詞になっている。

また、わが国の品質管理の発展にかかわりの深いデミング博士にちなんだデミング賞が、品質管理における業績の大きな企業に授与されており、この賞を取得する過程で開発された各種の品質管理手法が広く製造業界に普及している。

4.2 建設業における品質管理

 製造業よりも若干遅れて建設業界にもTQC活動が導入され、ゼネコン・設備工事会社各社ともデミング賞取得を目指し、某ゼネコンが受賞したこともあった。しかし、設備工事会社の中には、建設業務の流れの中では品質に関する権限を自社が把握していない状況では、TQCは実行するがデミング賞は狙わないといった醒めた見方の会社もあった。これはある意味で、建設業界の本質をとらえた見方でもあると筆者は考えている。

4.3 ISO9001について

 品質保証に関する国際規格ISO9000シリーズは1987年に制定され、その後1994年、2000年に改定されており、JIS規格にもなっている。

ISO9001においては、企業が提供する製品に関して、いろいろな要求事項を満足させることにより、品質を確保することになっている。製品は一般的に目に見える製品から、サービス・管理業務など目に見えないものまでが対象となっている。 製品を作っている企業の品質システムがこの規格に適合しているかどうかについては、クライアントに代わって第三者の審査登録機関が審査・認定することにより、適合性を認定している。

この規格は国際規格であるため、わが国で認証登録された企業は、当初は輸出型製造業の企業が多かったが、2000年の改訂版では広範な産業へも適応可能となり、現在ではサービス業にも普及しており、建設業界の技術者はこの規格の下で、品質改善に励んでおられ方もいることと思う。

主要産業の中で建設業の取得割合がどの程度であるかは不明であるが、その割にはトラブル・クレームが多いのがこの業界の特徴といえる。

 筆者は現役時代に会社がISO9001認証取得の際に、当該部門において取得のための業務に従事した。この際に、自社及び建設業界の製品の品質管理に関し教えられることが多かった。

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