建築設備トラブル概論(0)はじめに
◆はじめに
建築設備に関するトラブルは、大きく範囲を広げれば計画・設計の段階から施工、管理・運営にいたるまで、あらゆるところに存在している。
本書では工業生産品としての建築設備を対象とし、その不具合によるトラブル全般についての考察を行うこととした。
従って、業務上・工程上のトラブルについては、設計・施工のトラブル発生要因として以外には扱わない。
取り扱い・管理上の不具合は設備機能充足に不可欠な問題点であるので、トラブルに取り上げた。
これらの設備トラブルについての類書は沢山ある。これらは、設備工事区分別や建築・設備部位別等、区分整理を行い充実した解説を行って、理解しやすいようにまとめられてはいるが、そのほとんどは個別事例の紹介を主としており事例・現象ごとの状況・原因・対策の羅列であり、体系的にまとめられたものはすくない。
体系的にまとめられていないなどと述べたが、そもそも設備トラブルのように幅広いジャンルに関して体系的にまとめるのは大変に難しい。諸誌も設備工事区分別や建築・設備部位別等、区分整理を行い充実した解説を行って、理解しやすいようにまとめられており、筆者も参考にしている。
トラブル対策・再発防止の基本は多くのトラブル事例を知っておくことであるから、これらトラブル本の存在は貴重ではあるが、所詮他人の経験である以上、数多くの個々の事象・現象を自分のものにすることは中々難しい。『設備と管理』誌連載の設備トラブルに関する『「マサカ」の話』を読み物風にまとめたゆえんである。又、トラブルの原因も簡単な施工ミス程度のものから計画時点で配慮すべきであったものまで多種多様である。
トラブル・不具合防止に関しては基本的な原因・要因について把握していなくては、同じようなトラブルを引き起こす恐れがある。建築設備の制作・生産過程に従事する者にとって、自己の立場に応じて計画・設計・施工業務の流れの中に潜む問題点について認識・把握しておくことは必須のことと考える。
特に設備計画・設計の上流側に位置する、建築計画における、トラブル防止の配慮が重要である。
建築設備トラブルのように幅広いジャンルに関して体系的にまとめるのは大変に難しいことであるが、折角蓄積した知識であるので、及ばずながら「概論」という形でまとめることとした。
皆様の参考になれば著者の喜びとするところである。