建築設備トラブル概論⑪ 現象要因別トラブル④

2023年08月15日

【逆 流】自然流下による排水は、上記第一法則に従って、配管勾配により上流から下流に流れる。

何らかの原因で、下流側の水位叉は水圧が上流側より高くなれば、同じ法則に従い逆流が発生する。設備技術者が意外に気が付かないのが、集中豪雨時の公共下水本管の水圧レベルである。

公共下水本管位置が、排水管接続可能レベルであっても、上流では建物排水管レベルより高くなる。集中豪雨時には公共下水管は満流状態に近くなり、上流側の水圧を受けて建物内に下水が逆流する。このトラブル事例は類書に多く見られる。

半地下住宅での逆流事例は住民・事業者いずれにとっても大事故であるので、別項に述べる。

昔のマンションでは、便所内に排水竪配管があり、上流階からの排水が便器に流れた事例がある。(MA)

 怖いのはクロスコネクションや逆サイフォン現象による、飲料水系統への浴槽・洗濯機・食器洗浄機等からの逆流現象である。

【吹き出し(排水トラップ、雨水管からの)】

  • マンション最下階排水管の系統分離

排水の溢れ方は、静かに溢水する場合と、吹出す場合がある。大便器の排水の流れは「チョロチョロ」ではなく「ドバッ」であるから、障害物が下流側にある場合は、すぐ手前の大便器排水トラップからは水が吹出す。これは配管つまりだけでなく、排水管の不適切な接続が原因となることもある。特殊継手を使用した単管式排水システムが開発された初期には、マンションの最下階でこのトラブルが発生した。

マンションでの、共用排水配管は最下階系統と上層階系統を分離することは基本的常識であるが、最近の竣工物件でも筆者にこの原因の相談事例がある。

  • マンション排水口からの泡の吹き出し

泡の吹出し事例は集合管が開発された初期にあった。(MA)これは集合管の改良や最下階排水配管系統の分離、最下階横管のサイズアップ、エルボの改良等で解決された。その後20年以上経過して、某マンションで某メーカー開発の洗剤で泡の吹き出しが発生、排水配管の設計・施工ミスの可能性を指摘されたが、1年間のテストの結果、原因は洗剤にある事が判明した。この洗剤は製造中止となった。

トラブル事例の伝承(洗剤メーカーのであるが)が、時間と共に消えてゆくといった事例として挙げた。

  • 雨排水の1Fでの吹き出し

雨排水は、GL階で流れの方角が縦から横に大きく変わるだけでなく、雨排水管の工事区分が、建築工事から給排水設備工事に変わるので、吹出しトラブルが発生しやすい。

設備工事による、雨排水の受け口配管に建築工事の雨水竪管を差し込んだだけの施工で、マンションの1階廊下が水浸しとなった事例もある。

雨水竪管が接続される直近の雨水枡では、雨水の吹き出し現象が発生する。上記の事例同様、竪管の屋上排水受け持ち面積が大きかったり、落葉による屋上ルーフドレインのつまりで特定の竪管に雨排水が集中した場合などに起きる。もちろん下流側でのつまりでも発生する。(MA)

最近はルーフドレンにかぶせて屋上雨水の大量流入を防ぐ(オリフィス付)、筒状の品物も開発されている。

  • その他では、排水ポンプ運転時に排水桝から吹き上げた事例もある。

【半地下住宅の危険性】

溢水、逆流、吹き出しから状況によっては水没に至るまでの、多様なトラブルに関係するのが、半地下住宅・マンションに於ける排水設備の不備である。

建築基準法第19条には「敷地は周辺道路及びこれに隣接する土地より高くすること」とある。この条件に適合しない敷地は多いので但し書きに「衛生上・排水上差し支えない場合はこの限りではない」と条件付けがしてある。

半地下住宅・マンションの計画の際に、下水道本管レベルが深く、半地下階の)排水管のレベルが適合すれば直接放流接続してしまう事例が多い。この場合は集中豪雨時でなくても排水本管の満流状況によっては、半地下階に上流階排水の吹き出し・溢水や、下水本管からの逆流事故が発生し、入居者に多大の迷惑をかけることになる。

筆者がコンサルタントした事例では、マンション1階の床レベルが道路レベルより低く、直接放流であったので、1階の排水系統は分離されてはいたが、普通程度の降雨時でも1階の洗濯パンやトイレで水が噴出した。この場合は1階排水系統を排水槽+ポンプアップ排水に変更した。(MA)勿論この状況は瑕疵であるから事業者は改善のための費用負担が発生する。従って事業者側は入居者から筆者に相談があるまで姑息な対応しか行わず、共用部EVホールに雨水が浸水したため、マンションの管理組合が動き、上記対策を行うこととなった。事業者側は筆者に指摘されるまで、上記状況が建築基準法第19条違反あることを認識していなかった。

東京都下水道局の技術基準では、下図のように、このような配管を禁止しており、ホームページでも発信している。しかしこの現象は、建築基準法第19条の但し書きの不適合であるから、本来は確認申請時のチェック項目とすべきであろう。

東京都下水道局ホームページより「地下室・半地下建物の浸水対策のお願い」

※※残念乍ら、このホームページの図を張付けることはできなかった。直接上記HPにアクセスされたい。

1.晴天時の排水状況晴天時などは、下水道管内の水位も低く、トイレなどの排水は自然流下で下水道管へ排水されます。

2.豪雨時における浸水被害:豪雨時には短時間で大量の雨水が下水道管に流れ込むと、下水道管内の水位が上昇し、下水が宅地内の排水管を通って逆流し、半地下部のトイレやお風呂場などの衛生器具から下水が噴出するおそれがあります。
また、下水道管に収容しきれなくなった雨水が道路側から建物側に流れ込み、半地下、地下部が浸水したり、水の圧力で半地下、地下部のドアは開きにくくなり危険です。

3.豪雨時における対策後の状況

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