建築設備トラブル概論⑪ 現象要因別トラブル⑤
【水 没】浸水、溢水、逆流の発生時にこれに対応する処置が講じられていない場合や、対応策があっても間に合わなかった場合には、ピット式駐車場や機械室・電気室・駐車場のある地下室が水没する。
受水槽の溢水による水没事例は類書にある。これは給水定水位バルブ故障時に警報が出たが、管理会社に移報されておらず、水没したものである。
集中豪雨時にマンションの地下駐車場に浸水し、車が水没したトラブル相談事例は、インターネットでたくさん見つかる。回答を見ると、この状況が建築基準法第19条の不適合であることを認識していない法律関係者が多いことがわかる。
河川の氾濫時は仕方がないであろうが、ちょっとした集中豪雨時の雨水の浸水は防水板や土嚢や建築の立ち上がりで防ぎ、下水本管からの排水の逆流には、最下階排水を別系統とし、ポンプアップ排水とすれば対応できる。ドライエリアや、GLより低い部分の中庭の雨水についても、ポンプアップ排水とする。このような対応をしていないマンションがあるのも『マサカ』である。
半地下住宅の危険性で述べたコンサルタント事例では雨水対策も行った。設計では。敷地内雨排水は貯留槽に溜め,ポンプアップ排水及びオーバーフローは、下水本管に直接放流という設計になっていた。半地下建物であるから、集中豪雨時に雨水が逆流すれば、地下1階の電気室、受水槽室は水没する。雨水系統は1階のみを別系統にできないので、逆流防止用チャッキ弁+地下ピットへのオーバーフロー方式で対応した。(ピット内排水ポンプは多数設置済み)
- 雨水流出抑制地域での地下の雨水貯留槽への雨水流入
上記のような半地下住宅でなくても、建物の敷地内雨水は流出抑制のため、一旦貯留して排出するように各自治体からの指導がある。
敷地内に遊水地・貯留槽が取れない場合は建物内に貯留槽を設ける必要がある。この場合は、敷地外部からの雨水流入対策が必要である。雨水の貯留槽への導入管に流入停止のバルブ類が設置していないと、貯留槽で溢れ地下の電気室等に浸水し被害が大きくなる。武蔵小杉マンション浸水事例がこれであるが、大手のデベロッパー、ゼネコンでもこのような情報が共有されていないことが問題である。(建築設備が経験工学である所以といえる)これらの設計ミスは、雨が大量に降らないと判明しないのが困る。
またマスコミは、タワーマンションの危険性についてのみ騒いでいるが、一般のマンションでも建物の地下に雨水貯留施設がある場合は、全て要注意である。したがって地下雨水貯留施設の安全性の見直しは、喫緊の急である。これをお読みになった方は、自分の関係したマンションについて見直してほしい。
又、マンションにお住まいの方は、工事会社などを通じて安全性を確認されたい。