建築設備トラブル概論⑪ 現象要因別トラブル⑥
【結 露】結露トラブルだけで一冊の本(『建物の結露-トラブル事例と解決策』学芸出版社)が出ているほどであるから、このトラブルは非常に多い。建築に関するものも含めて述べる。
- 建物関係:建物の結露といえばガラス窓であるが、それ以外の所でも条件次第で結露が発生する。
初期のマンションでは、北側外壁に断熱材の打込みがなく結露が発生した。その後北側外壁面のみに打込んだため柱・梁やオープンの階段室側の壁が結露した。現在では、省エネのためもあって、屋根スラブや外壁、柱・梁と外壁から1~2mまでのスラブ断熱が標準となっている。しかし、北海道などの寒冷地では、躯体と打込み断熱材との間に結露が発生するのは良く知られている。関東地方でも結露まではいたらなくても、断熱材を剥がすとカビだらけだそうである。外断熱でなければ防止できないことは言うまでもない。押し入れなど空気の動きが少ない場所も結露しやすいため、最近のマンションプランでは、収納部は内壁側に設置されていることが多い。
ガラスの結露を防ぐため二重ガラスにしたらサッシに結露し、これを防ぐために断熱サッシが用いられている。最近では断熱ドアなる商品もあるが、省エネ対応なのか結露対策なのか、開発意図を知りたい(ドア結露のトラブルはあまり聞いていないので)。いずれにしても結露を防ぐための対応は、断熱により熱貫流率を上げることであるから、結露防止対策により結露できなかった水分は、上記のようにどこか断熱性の弱い所で結露する。日経ホームビルダーによれば最近では小屋裏等目に見えないところに結露が多くなっているようである。換気設備の設置も必要であるが、室温・湿度を上げないような生活上の工夫も必要である。筆者としては、著書にも述べた様に「窓面結露は冬の除湿器」と割り切って欲しいと考えている。
ガラス面には、冬季の内面結露だけでなく、夏季の外面結露がある。ガラス面のすぐ近くに吹出し口があったため、冷風が吹き付け窓が曇ったことがある。東南アジアのホテルでは室温の設定が非常に低く(20℃近く)、結露で外が見えないことが良くある。
ガラス窓と同様に、結露注意箇所は天窓やトップライトである。屋内プールの大きなトップライトにとまったカラスが、一斉に飛び上ったら水滴がバラバラ落ちてきたという話も聞いた。自然排煙口のパネルも結露する。
省エネのために24時間の空調を止めたら、内装に結露、カビが発生したという笑えない話もある。
- 設備関係部材:配管系・空調ダクト系いずれも結露条件は備わっているので、断熱材の併用は必須条件である。換気設備関係では、通常はダクトの断熱はしないが、寒冷地ではダクトの内面・外面結露が要注意である。
寒冷地の外気ダクトの断熱は必須であるが、全熱交換器の効率が良い場合は、排気側の排気温度が外気温度に近くなり、結露の恐れが発生する。厨房、浴室排気等湿気の多いダクトが、開放廊下など温度の低い空間にあると内部結露となる。
寒冷地ではないが、屋上に露出設置された排煙機に接続されたダクト内面に結露した事例がある。排煙ダクト内の空気が上昇して屋上の露出ダクト内部で結露したものである。
- 吹出し口・排気口:吹出し口は夏季の冷風吹出し時に温度が低くなるので、湿度の高い外気に触れると結露が生じる。風除室や室外に開かれた空間では、吹出し口の材質を変えるなどの配慮が必要である。
厨房や浴室系統の排気口も結露し易い。通気管は通気口や、通気口近くの外面に結露するので、通気口から2m程度までは断熱し、配管勾配は外部に向かって上り勾配となっている。
1階出入り口付近の天井や風除室内の吹出し口の結露は良くみられるが、一般の空間でも、外気の給気口が外壁でなく天井面に設置され、給気ファンの無い自然給気の場合は、夏期の流入外気が天井面を這うように流れ、天井カセットエアコンの吹出し口に結露する。