建築設備トラブル概論⑪ 現象/要因別トラブル
11. 現象/要因別トラブル
『マサカ』の話の連載にあたっては、蓄積されたトラブル情報の中から同じような事例を読みやすいようにキーワード的なタイトルでまとめた。その結果、トラブルのまとめ方は期せずして現象別・要因別のものとなった。これが他のトラブル本との大きな違いである。
ここではトラブル発生の要因・原因については、今まで述べてきたこともまとめて総括的に述べることとする。
なお、要因・原因ともに似たような言葉ではあるが、直接の原因という言葉があるように、ここではトラブルを惹き起こした具体的な行動・事象を「原因」とし、それを含んだ上位の事象を「要因」と呼ぶこととする。たとえば、設計ミス、施工ミスは原因であるが、経験不足、トラブル教育の不足やマニュアルの不備などはトラブルを引き起こす要因といえる。建設業界共通の要因もある。したがって、建築設備業務全体の流れの中に潜むトラブル要因は、直接原因と区別し次項にて述べる。
但し、話の内容によってははっきり区別できない場合もあると思う。
尚、「『マサカ』の話」の掲載事例には(MA)を記した。
11.1 現象/要因別のトラブル把握の必要性
設備トラブルは各工事分野の殆んど全ての部分で発生する可能性がある。従って発生したトラブルについて、あそこではどうこう、ここではどうこうと、個々の事例をただ把握しているだけではトラブル防止のためには不十分である。建築設備関係ではないが、某製造業の会社で集めたトラブル・クレーム事例はデータファイルに数千件もあるが、多すぎて使われていないという話もある。トラブル本や各施工会社には事例報告はたくさんあり、現象(状況)・対策・原因と言うように再発防止の参考になるようにまとめられているが、全部を把握するのは難しい。
発生したトラブル現象とその原因・要因には必ず何らかの関連がある。トラブルの種類・現象は見た目には個々に違っていても、実は本質的には似たような原因・要因によって惹き起こされている状況もよくある。これは、設備工事の種別や、機器類の違いには関係ない。
表面的な原因は特定されても、本質的な問題点はより奥深い所や全く別の所に存在する場合もある。現象と真の原因やその発生につながる要因を関連付けるようなトラブル把握が必要である。また、トラブルの理解には、かえって現象/要因別に把握したほうが理解しやすいこともある。
トラブルには各設備特有のものもあるが、各設備共通の原因によるトラブルもある。又、複合原因によるトラブルもある。
個々のトラブルごとにその原因を探り、対策を講じることも大切であるが、原因の奥に潜む共通の要因を把握するように心がけることが、再発防止につながる。