建築設備トラブル概論⑪ 現象/要因別トラブル②

2023年08月09日

11.2 現象/要因別トラブル

初めにトラブルを現象別に区分し解説する。トラブル現象の区分の名称は、筆者の見解による。

(1)水のトラブル

≪水は(水圧の)高きより低きに流れる≫というのが、筆者が勝手に名づけた給排水設備の第一法則である。(空調設備にも適用可)

この法則は、水質関係や(水の)吹出し、結露、凍結以外のほとんどの水のトラブルに適応可能である。

【水質に関するトラブル】

水質に関するトラブルは殆んど本管からの引き込み以降に発生するといってよい。したがって、貯水槽・高置水槽については、構造、材質、容量、に配慮されている他、メンテナンスに容易なように、設置スペース等に関して建築基準法に規定されており、点検と清掃・消毒が求められている。

  • 給水・湯水内異物

給水・湯水の色や異物、流し・洗面器・浴槽・便器に付着するものはさまざまである。赤水は鉄錆またはカビ、風呂の青水は給湯銅配管からの銅イオンの析出、黒水・黒異物は配管内パッキン類や器具類ホースの劣化剥離、白水・白い異物は炭酸カルシュームまたは、シール材、ライニング材、フレキホース樹脂コーティングの劣化剥離などが主な原因である。ホームページで検索するとびっくりするほどのたくさんのトラブル事例がみられる。各地の水道局がまとめているものがホームページで見ることができる。

  • クロスコネクション

大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンで発生した工業用水の水飲み器への誤接続が大きな話題となったが、その後も工業用水の普及とともに同様の被害が発生している。外部からの配管だけでなく、施設に設けられた雨水利用設備や中水設備の配管が給水管に誤接続された事例も報道されている。これらはすぐに健康被害が発生しないのが困る。報道事例では数年間利用者が気が付かなかった事例が多数である。別の見方をすると我が国の中水の水質レベルは非常に高いといえる。

 空調系統配管とのクロスコネクションもないわけではないが、冷温水・冷却水とも飲用水と比べ汚れ方が激しいので、誤接続はすぐにわかる。

 クロスコネクションではないが、昔はガスの配管は白ガス管を使用していたので、誤接続でガスコンセントから水が出てきたこともあったそうである。

  • 逆サイフォン現象

断水時に配管内が負圧になると、水栓につながれたホースなどがバケツやたまり水に浸かっている場合に逆流する現象である。



【漏 水】

前項に上げたトラブル現象のうち、連載及び著書に(多分)全く登場していないのが、「漏水」トラブルである。

騒音・温度とともに3大トラブルの一つであるが、『マサカ』の要素は比較的少ない。

施工ミス、配管腐食、配管の破断によるものなどマタカ事例が殆んどである。程度にもよるが、漏水はすぐに直さなければ被害が大きいので、手当てが終われば設計者への連絡がないこともある。腐食や破断による漏水の場合は、設計者の見解を求められることはあるが、マサカの事例は少ない。

空調設備、衛生設備いずれも密閉配管系に圧力のかかった水を保有している。したがって施工にあたっては必ず水圧テストを行って漏水トラブル防止を心掛けている。そのためもあって主要配管系での漏水トラブルはあまり聞かない。

マンションの専用部や器具接続部での漏水事故は多い。竣工検査では衛生器具類接続箇所でのわずかな漏水(「泣き」という)が見られることはよくあるが、この部分の漏水はすぐに目につき直されるので問題は少ない。

マンションの床ころがし配管の、床仕上げの釘打ち抜きなどはマタカ事例といえる。(MA)

ウォーターハンマーや膨張・収縮の繰り返しにより配管接続箇所が緩んだり破損したりすると大事故となる。関西方面では、マンションの専用部分の配管に塩ビ管を用いているところがあり、施工不良により差し込み配管が抜けることがある。

自動エア抜き弁や水逃がし弁などの接続箇所に異種金属を用いて腐食による漏水事故となったり、埋設配管の施工不良など、漏水事故の種はあちらこちらに転がっている。

破断による漏水は膨張・収縮に伴うものが多い。

 

配管系の事故・トラブルには付属・接続されている機器・器具類からの製品不良・腐食・破損に伴う漏水事故もある。この場合はメーカー側が原因となるので、設計者には情報は上がらない。何かの機会に工事関係者から「ジツハ」と聞かされることがある。

マンション設備の漏水に関しては、「漏水がありました何が原因でしょうか」など相談のゆとりはない。即手直しが必要である。従って無料相談のホームページでの事例は少ない。

水槽類のオーバーフローから水が出てくるのは溢水であるが、膨張弁・安全弁等が機能している場合の漏水と同様に事故ではない。何らかの原因でとまらなくなった場合が事故であるが、正規の作動を漏水事故と捉えられることがあるのが困る。

最終的被害の形は「水漏れ」のような形となっていても、途中経過的現象は結露や溢水、浸水、逆流などであることもよくある。したがって、「漏水」は密閉・開放を問わず配管系及び接続する機器・器具・水槽類の事故とし、その他の「溢水」・「浸水」による開放端末(器具、桝等)系の漏水事故と区別する必要がある。逆流事故は、開放系、密閉系配管いずれにも発生する。

なお、結露に伴う漏水は結露の項で扱う。

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