建築設備トラブル概論⑫ 現象要因別トラブル⑧
最近ではカセット型ファンコイルユニットが停止した際の、吹出し口の結露がある。停止中にも冷水が流れていると、カセット型の場合はコイルがユニットの上部にあるので、内部の空気が冷やされて(運転時より低くなる)吹出し口の方に流れ、吹出し口が結露したというトラブルである。このような原理であれば、従来のFCUでも発生の可能性はあるが、コイルの列数・コイルから吹出し口までの距離・吸込みフィルターの抵抗(これが小さいと自然対流を起こしやすい)などの違いで、このトラブルは発生していないのであろう。
外気取り入れダクトが、ファンコイルユニットに直接接続されていて、停止時に冬の外気が流れ込んで本体外板に内部結露・滴下した事例もある。この場合は便所換気扇類の運転により生外気がFCUに導入され吹出口でも結露したそうである。
- ボイラ:ボイラ内部で低温結露が発生することはよく知られている。還水温度が低いと、燃焼ガスの水分が缶体内部に結露付着する。燃焼空気の結露水には燃料中のいろいろな成分が含まれているので缶体の腐食につながる。このあたりは、筆者よりもボイラーマンの方々の方が詳しい。
- 煙突、煙道:熱源機の煙突は発電機の煙突と共用されることがある。ガス冷温水機燃焼ガスが発電機の煙道内に結露し、マフラーに溜まって発電機内まで水が入ったことがある。煙突を共用する場合は発電機煙道を先下がりとして、発電機側には水が流れ込まないようにすることが必要である。
また、ガス冷温水機と給湯ボイラの煙道が共用された場合で、給湯ボイラの運転停止時に、排ガスが逆流しボイラ内に結露が発生した事例もある。
【凍 結】
寒冷地や高地の場合は、凍結事故の危険にさらされているので、対応してあるのは当然であるが、温暖地域でも大寒波に見舞われる場合があるので、凍結対策を配慮しておく必要がある。ここでは詳細は述べないが、温暖地域でも大寒波の場合は外気に直接触れるものとして、駐車場ビルの泡消火設備の感知管や、北側に面したビルの仕入れ口がリングシャッターなどで開放されている場合のスプリンクラー配管に凍結の危険がある。前者では感知管の断熱保温、後者では該当部分のみを開放式ヘッドとする等の対策をおこなう。昭和〇〇年の関西の大寒波ではマンションの消火栓配管が凍結した。開放廊下の外側に配置されていて、配管が外気に露出されていたためであった。
空調・暖房関係では蒸気・温水・冷水(?)コイルの凍結事例が昔のトラブル本に多く見られる。特に蒸気や温水が自動制御により絞られた場合に、冷たい外気との関係で凍結の恐れが発生する。また産業空調では24時間運転されるので、寒冷地でなくても凍結防止対策が必要である。最近は不凍液の使用による凍結防止対策が一般的である。
冷却塔も凍結対策が必要であるが、最近は空冷の熱源機が多くなったのでこのトラブルは少なくなったものと思われる。
余談ではあるが、雪も水のトラブルの一種といえる。現在では寒冷地でもヒートポンプが使われるようになったが、室外機の雪対策は重要である。防雪フード、高置台もあるが、ピロティ―、キャンチレバーなどの下に設置するなどの工夫も必要である。
雪は外気取り入れガラリからも吸い込まれる。大寒波や大雪対策は寒冷地以外の建物でも配慮が必要である。詳細については、寒冷地工事のマニュアルを参照されたい。