建築設備トラブル概論(1)建築設備とトラブル 1.2建築設備の性格付け
※この概論は単行本にする予定であるので、内容は煩雑である。これ以降は抄録とし、全文表示をしない場合は(抄)を追加する。
1.2 建築設備の性格づけ(抄)※建築設備トラブルについて理解するためには、各設備の特徴の把握が必要である。ここでは「建築設備の性格付け」と題して、それぞれの比較を行った。
①給排水・電気・空調の3設備の性格付け
筆者の友人の定義づけによると、給排水設備は「生存設備」、電気設備は「生活設備」、空調設備は「贅沢設備」であるとのことである。
人類の生活の変化と、インフラの充足もこの順序で発達してきている。水がなければ生きてゆけないのであるから給水設備は生存のためには必要である。電気設備(照明・動力)が生活を豊かにしていることは言うまでもない。寒冷地での暖房は生存のために必要であるが、長い間人類は冷房なしで生活をしていたのであるから、空調設備(冷房)を「贅沢設備」と呼ぶのもあながち意味のないことではない。機能面でも、水の供給と排出、電気の供給という比較的簡単な目的に比べ空調設備は室内環境の快適性の維持というある意味の贅沢さが求められている。
大災害の場合でも、水・電気・ガスのインフラの被害の有無と、被害があった場合はその復旧が喫緊の課題となる。建物内の設備についても被害があった場合は、生存・生活設備の復旧が優先され、地震でひっくり返った室外機の復旧は後回しである。
②個別システムか、全体システムか
各設備の性格付けに関しては、その設備が個別システムか全体システムに関係する。
電気設備に関しては、強電(動力・照明)、弱電(電話・情報等)それぞれ外部引き込みから端末の照明、コンセントまですべてつながっているので、全体システムといえる。
給排水設備に関しては、給水設備、排水設備はそれぞれの端末器具・機器は地域の給水・排水本管とつながっている。給湯設備は建物により、全体システム、個別システムが混在する。
空調(暖房含む)設備は、建物の用途・規模によって個別・全体システムが混在している。
冷房設備の普及時にはセントラル方式が一般的であったが、昨今は大型ビルでも個別システムが採用されるようになった。換気設備は基本的には個別システムであるが、建物の種類によってはセントラル方式と系統がある。
③搬送する媒体と付随するトラブル
3設備とも要求される機能を満たすために必要な媒体を搬送している。それぞれ電流、水、空気である。各設備とも負荷計算、容量計算の他に、搬送のための設計が設備計画・設計の重要な部分を占めている。ここでは、搬送媒体について洩れたら困るというトラブルからの側面から述べる。
- 電気設備の搬送媒体:「電流」(高圧、低圧、弱電圧)・・・電気エネルギー及び情報。
電流はある意味危険物であり、これに触れることは命に係わる。したがって漏洩は絶対に防がなければならないから、搬送のための部材(電線)は絶縁されている。漏電を感知・予防するための漏電ブレーカーも設置される。搬送にあたっては必要以上の容量を送ったり、抵抗などがあると熱を持つ。また操作上配慮することも多い。したがってこれらの危険性を防ぐために「内線規程」が定められている。そのせいもあって、3設備のうちで電気設備のトラブルが最も少ない。
- 衛生設備の搬送媒体:「水」(清水、汚水、温水、雨水)
生存のために必要とはいえ、水は器に入っていることが必要である。電気のような危険性はないが洩れては困る。空調設備起因のトラブルも含め、漏水は設備の3大トラブルの一つである。
排水は開放配管内を自然勾配により流されるので、「水は高きより低きに流れる」、「先が詰まれば手前で溢れる」という給排水設備の法則がみられる。
- 空調・換気設備の搬送媒体:「空気」(空調用冷風・温風、外気、汚染空気)
漏れてよいわけではないが、臭気や厨房排気以外は、漏れることによる被害や機能低下は少ない。しかしマンションでは、排出された後に近接住戸に吸い込まれてトラブルになることが多い。