建築設備トラブル概論(1)建築設備とトラブル 1.2建築設備の性格付け(続き)

2023年03月15日

⑤負荷変動の範囲と運転・使用時間

3設備とも使われる際に負荷が発生する。しかし、給排水・電気設備と空調設備ではその発生パターンが大きく異なる。給排水・電気設備はON-OFF又は0-100の世界であるから、問題となるのは負荷率である。特に給排水設備は、短時間の100%運転の集積であるから負荷率工学といっても過言でない。(実際には使用者により開栓程度による水量の違いはある)これによるトラブルは『マサカ』の話で「一度に使うとお湯がなくなる」のタイトルで紹介した。

 電気設備は使用時間の長い100%運転の集積である。どちらの設備も配管径や電線太さは、同時使用率に配慮して決められる。

 これに対し、空調設備の運転時間は長く負荷変動はリニア-であり、しかも変動幅は暖房時の-100から冷房時の+100迄変化する。また負荷発生頻度も部分負荷の方が多い。この負荷変動に追従して室内環境を維持するのであるから、計画・設計の際のシステム選択の幅や配慮事項はたくさんある。温湿度不具合が(暑い寒いのトラブル)3大トラブルの一つとなっているのは理由のないことではないのである。

 換気設備は室の用途に従って、長時間運転、短時間のON-OFF運転の組み合わせとなる。

⑥基本性能とその制御巾・許容幅

 3設備はそれぞれの要求機能を満足させるため、搬送される媒体の量を制御しているが、ここでもそれぞれの特徴がある。

 給水設備の水圧については、器具により必要最低圧力が決められているが、上限は機器・器具類の耐圧以上には特には決められていない。以前の集合住宅では各戸には減圧弁が付けられていなかったので、下の階の水圧は高かった。水道局の給水圧は、建物入口部分で200kPaが目安であるが、管轄地域の土地に高低差があると、低い地域では給水圧が高くなる。しかし余程でなければ、高い水圧に対する許容幅は大きい。また、同時使用率が高い場合で水栓の水の出が悪くなってもクレームになることは少ない。排水勾配も基準通りでなくても水は流れ、不具合が発生しないこともある。

 空調設備の風量に対する許容幅も大きい。空調機のエアフィルターの目詰まりにより送風量が低下しても室温制御への影響は小さい。これは冷水コイルの選定に余裕があるためである。排気設備でも設計通りの風量でなければ機能が満たされないわけではない。厨房系統のシロッコ型排気ファンは羽根が油で汚れ風量が低下するが、清掃するまでは排気が悪くなっても許容範囲内であるといえる。

機械設備にトラブルが多いのは許容幅が大きいせいであるともいえる。

電気設備の電圧・電流の変動幅は小さい。制御幅は0-100である。

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