建築設備トラブル概論8.エンジニアリングトラブルと建築計画関連設備トラブル①

2023年07月12日

8.エンジニアリングトラブルと建築計画関連設備トラブル

建築設備のトラブルは多種多様であるが、大きく分けると、エンジニアリングトラブルと建築計画関連トラブルに分類することができる。建築設備は建物の一部であるから、設備トラブルの原因が建築計画・設計・施工にあることは多い。

この分け方については、連載第108話「建築設計と設備トラブル(1)」(2009年10月号)で取り上げた。恩師井上宇市先生は「設備計画法」(コロナ社・絶版)を書かれて建築学科の学生に講義され、設備計画の重要性について述べられたが、これは建築設備トラブル予防に役立つことである。

なお、上記報文では、エンジニアリングトラブルと建築計画関連トラブルに分け計画段階での設備トラブル防止について述べたが、実際には実施設計や施工段階でのデザイン的要求や施主側要望による変更が設備トラブルが発生する事例も多いので、本稿ではこれらを建築計画も含めまとめて「建築計画関連設備トラブル」と呼ぶこととする。

建築設備は各設備の機能を充足させることを目的とするエンジニアリングであるから、この分野のトラブルが発生した場合は、原因の追究から是正・再発防止に至るまでエンジニアリング的に解決されることが一般的である。

しかし、設備トラブルのなかには、振動・騒音や排気のショートサーキットのように、エンジニアリング的技術だけでは解決できない、または解決のためには非常な手間やコストがかかるものが多数ある。また、建築のデザイン的に無理を要求されて設備の不具合が発生した場合も同様である。建築のリニューアルにより『マサカ』の設備トラブルが発生する事もある。

これらの建築計画関連設備トラブルは通常はっきりと認識されることが少なく、またその情報も設備トラブルということもあってなかなか意匠設計者まで伝わらない。建築計画に起因する設備トラブルを建築設計者に認識してもらうことは、後から手直しが出来ないような大きなトラブルの防止の必要条件である。またデザイン的な我儘や自己満足が、建物利用者や設備関連業者に迷惑をかけることがあるということも建築設計者に認識してもらいたいことである。

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