建築設備トラブル概論8.エンジニアリングトラブルと建築計画関連設備トラブル②

2023年07月14日

8.1 エンジニアリングトラブル

 機能不全や機能障害など、各設備の専門分野で要求される本来機能の不具合はもちろんエンジニアリングトラブルといえる。また、各設備に付随して発生するトラブル(漏水、騒音等々)も基本的にはエンジニアリングトラブルであるが、建築計画が原因のトラブルもある。

 これらのトラブルは各設備共通に、システムトラブル、機器トラブル、資材・部材トラブル、器具トラブルのように分けられる。詳細説明は後述するがトラブルの原因がどこにあるかを把握することが、解決の糸口である。

8.2 建築関連設備トラブル

 建築設備は建築に組みこまれているのであるから、計画の段階から、器具の配置に至るまで建築意匠設計の影響を受ける。計画段階では、機器の配置計画、ダクト・配管類のルート計画が設備トラブルに影響する。シャフトの位置や排気ガラリの向きにより設備トラブルが発生する。吹出し口のレイアウトは温度分布やドラフトに大きな係わり合いがあるし、温度センサーの位置もデザインで決められては暑い寒いのトラブルの原因になる。

 建築計画・設計の各段階や、ディテール決定の段階において、設備技術者がトラブル情報について建築意匠設計者に伝達を行うことが必要である。

8.3 設備トラブルの責任分界点

建築設備トラブルをエンジニアリングトラブルと建築関連トラブルとを分ける必要があるというのは責任分界点をはっきりさせたい事と、建築設計者に設備トラブルの原因者であるとの認識を共有していただきたいからである。

わが国においては、長い間電気設備も含んで建築設備設計は、一級建築士が設計することとなっていた。従って法律上の建前からは、全ての設備トラブルに関しては一級建築士に責任がある事になる。

然しその割には建築設計者が責任追及されることは少なく、専門性もあって設備関係技術者がトラブル対応に携わってきている。建築設備を含み、建物・施設の品質向上のためには、建築設計者の設備トラブルに対する意識改革が必要である。

姉歯元一級建築士の事件をきっかけに、設備設計一級建築士制度が創設されたが、一定規模(階数3以上かつ5000m2以下)の建築物の設備設計については、依然として一級建築士が設計することになっている。建築設計業務量の増大と、それに見合わない設計料の狭間にあって、意匠専門の一級建築士が実際に建築設備の設計を行っていないという状況に問題はあるが、設備トラブルに関して意匠設計者が、自分が原因者として係っていることの認識が少ないのが問題である。

意匠設計者の中には、自分の計画にはすべてエンジニアリングで対応できると勘違いする方が時々おられるのが困る。こういう方の中には、設備の立場からの意見を、自分の計画への障害ととらえる傾向がある。建築計画トラブルがなかなか減らない一因でもある。

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