建築設備トラブル概論 2 ー工業生産品と建築設備1
建築設備のトラブルを考察するに当たっては、品質管理が優れていて製品トラブルが極めて少ない工業製品と比較し、それぞれの製造過程について考察することが必要と考える
建築設備を含む建築物は、工業生産品といえるではあろうが、工場で生産されるいわゆる工業製品とは大きく異なっている。建築物は総合的な生産品として、その中の部材・部品・機器類等の構成物・システム等には工業生産品が使われているが、基本的にはこれらのものを材料とし、組み立てて作り上げてゆくものと考えれば手工業品の要素を持っているものといえる。
これらの素材はもちろん有機的に組み合わされ、建築物の要求する多くの機能を充足させ、発注者・事業者・建物利用者の要求事項を満足させているのが通常である。また、プレハブ化など工場生産の割合を大きくすることにより、品質の向上に努めている。
しかし、各種トラブル本に紹介されているように、『マサカ』の他にも多くの『マタカ』のトラブルが発生しているのが現実で、建築設備の場合は使い始めてから全く不具合がないことのほうが珍しい。
特に住宅・マンション産業は(建築を含め)クレーム産業というような不名誉な呼び方までされている。
ここでは建築設備の生産と工業製品の生産の違いを取り上げて、建築設備トラブル発生の要因をつかむための手がかりとしたい。
工業製品には、素材・部品・部材に相当するものから、最終製品にいたるまでいろいろな種類の製品があるので、ここではエンドユーザーが、直接手にする自動車や家電品などの工業製品と建築設備をトラブル発生(品質管理)の面から比較を行う。
2.1 工業製品と建築設備の特徴
部品・部材から最終製品に至るまで非常に数多くの工業生産品があるが、一言で工業製品の特徴をあげれば、①少品種、②大量生産、③工場製作、④計画(見込み)生産といえる。
これに対し建築設備の特徴は、建築と同様に工業生産品と全く逆である。すなわち、①多品種(殆んどすべて)、②一品生産、③現場製作、④受注生産となるが、言い換えればすべての製品が特注品ということである。
それ以外の特徴として以下のような事がいえる。
⑤建物の中に付属品的に作られる為、空調・換気・給排水・電気設備いずれも単体としては存在できない。
⑥製品の規模・サイズが非常に大きい。
⑦工事区分・発注区分が複雑であり、全体把握が難しい。特に大型の複合用途ビルの場合はテナント工事や別途工事があるので、設計者・管理者の管轄外となる工事がある。
⑧製作に当たり多数の業種が入り組んでいる
⑨品質管理が難しい
⑩使用者側が設備内容を細かく把握していない
⑪ということで条件把握が甘く
⑫使ってみなければわからないという要因があり、トラブルが発生しやすいといえる。