建築設備トラブル概論 2 ー工業生産品と建築設備3
2.7 設計から使われるまでの業務の流れ
工業製品の場合は、基本的には設計どおりに作られる。また、設計変更が発生する場合は、製品に対する要求事項の変更や、部材・部品の不適合による場合が多く、設計者の想定範囲内であることが多い。
これに対し、建築及び建築設備の場合は、設計以前に計画決定に至るまでの過程に時間が掛かり、変更業務が多い。その他、後述するように製品の計画からエンドユーザーに至るまでに、多種多様な企業と技術者が介在する。そのため情報断絶が生じやすく、ISOで要求されるPCDAサイクルがまわらないのが問題である。
下請け等の存在はあっても、製造会社が設計して制作する工業製品との大きな違いである。
2.8 計画・設計上の問題点
建築・設備の計画・設計にあたっては、以下のような多数の問題点がある。
- 建物の設計は建築・構造・設備(空調・給排水・電気)に分かれており、その間の調整項目が多い。
- 法的規制が、建物単体規定である建築基準法と、建築種別・規模・携帯を規定する都市計画法に分かれているため、煩雑で、建築設計着手前の業務が多い。また着手前業務の報酬は評価されることが小さい。
- 事業者側・発注者側の意思決定が遅れがちだけでなく、設計変更・計画変更が多い。
工業製品の場合は、設計変更はないとは言えないが、少なくとも、意思決定は事業者側にあるので製作段階での頻繁な設計変更は建築・設備の施工と比べ少ないものと思われる。
2.9 品質管理
工場生産品は下請けや協力会社も含めて生産工程が明確であり、厳しい品質管理の下で、我が国の製品・部品・部材は世界一の評価を得ている。
これに反し、これらの製品・部品・部材を使用して作られる建築設備にはトラブルが絶えない。品質管理上の問題点は、設備トラブル防止の重要なポイントなので、稿を改め述べることとする。
2.10 取扱い説明書の不備
突然具体的な話になってしまったが、最終的工業製品には、詳しく厚い取扱説明書がある。最近は各種機能がたくさん付加されているので、小生のような年寄りには到底すべては読めないし、知りたい機能を見つけるにもオオゴトである。
建築設備の場合は、一般的には工事金額の割には取扱説明書がお粗末である。個別の機器の取り扱い説明書はあるが、これらをまとめた設備システムとしての説明書としては不備の物が多い。一般ビルの管理者はプロであるから、図面を見ればわかるであろうということかもしれないが、竣工図から設計意図や適切な運転管理方法を読み取れという事は不親切である。
省エネルギーに関しても、設計条件での考え方と、チューニングの可能性についての説明もほしい。