建築設備トラブル概論 2    ー工業生産品と建築設備2

2023年05月31日

2.2 少品種・大量生産と多品種・一品生産

 完成品として出荷される工業製品は高い工業技術を背景に、同じ製品を大量に加工・製造することにより量産効果を生み出し、品質の信頼性が高まっている。一箇所の不具合はかける数万台となるのであるから品質管理が厳しくなるのは当然である。これに対し建築設備を含む建築物は、工業製品としては特殊なものといえる。多品種・一品生産である建築設備の品質管理上のデメリットに関しては言を俟たない。

2.3 工場製作と現場製作

 建物及び設備は、製品としては戸建住宅でも十分に大きなものである。しかも、製品が設置される現地で製造される。この作業は製品である建築物の内部で行われる。設備機器等工業生産品は多く使用されるが、設備としてこれらを設置・組み立て・接続するための作業環境は、整備された工場のものと比べれば、劣悪なものといえる。そのほか、

  • 現場製作のため、工程管理・品質管理が難しい。
  • 製作に当たり多数の関係ない業種が入り組んでいる。
  • 設備技術者の技術レベルが施工業者によりまちまちである。
  • 工事区分・発注区分が複雑であり、全体把握が難しく、特に大型の複合用途ビルの場合は、テナント工事が発生するので全体設計者の権限が及ばない、等の問題点がある。

2.4 生産形態について

 工業製品の生産形態には、計画(見込み)生産と受注生産とがある。見込み生産では、業務の流れは、生産 ⇒ 販売であり、製品仕様は基本的には共通仕様以外は自社仕様である。また、業務は生産部門と販売部門に大きく分かれる。受注生産では受注 ⇒ 生産という流れになり、製品仕様は共通仕様の他は客先仕様となる。

建築・設備の設計には設計者が関与するが、その内容は事業者の承認が必要となる以上、客先仕様といっても過言ではない。

また建築生産の場合は、生産工程が設計と施工に分かれていることが多く、生産(工事)種別も、建築と3設備に分かれており、情報断絶が発生しやすい。

2.5 要求される機能と使われ方

最終製品であれ部品であれ、製品の使用目的や要求される機能は限定されている。求められる機能は、デザイン、操作性・耐久性や、省エネ性能など時代により主要なポイントは変わるが、使われ方については一定の状況下にあるといえる。

建築設備は、空調・衛生・電気それぞれに要求される機能は限定されているが、製品の使用目的に合致した使用条件や状況が建物の用途や設備の内容によって異なる。

2.6 設計条件・製品仕様の明確さについて

工業製品の場合は、部品・部材、最終製品に至るまで、発注者・購入使用する側の目的が明確であり、製品の使用方法も把握している。従って、製品の機能を充足させるためには、製品に対する発注者、製造者の意思すなわち仕様の明確さが必要である。見込み生産の場合は、製造者・事業者側で設計条件・使用条件が明確化され仕様が決められる。そのための専門の技術スタッフも社内に抱えられている。

建築設備の場合は、事業者(デベロッパー)に専門の技術者がいるところは限られており、設計者にお任せになることもある。

建築設備の場合は設計条件が若干あいまいである。一応設計条件は示されているが、これは機器の選定条件であり、多様な使われ方や負荷変動への対応は明確にされていないことが多く、自動制御機器や安全装置任せになっているのが普通である。

Copyright © 2019-2020  建築設備解体新書 All Rights Reserved.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう