建築設備トラブル概論      4.品質管理と設備トラブル②

2023年06月12日

4.4 品質管理とPDCAサイクル

品質管理の手法は数々あるが、そのうちで統計的手法と並んで重要なものが、PDCAサイクルである。これはデミング博士の提唱によるもので、改善活動のプロセスを「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(点検)」「Act(Action)(改良)」の順に実行し、最後の「Act(改良)」を次のサイクルの「Plan(計画)」につなげて、各サイクルごとにらせん状に品質を向上させようという考え方である。図に示すと下図のような形となる。

※PDCAサイクル図省略

このサイクルは、品質の維持・改善だけでなく広く企業の経営管理にも使われている考え方である。

①Plan(計画):目標を設定して、それを実現するための計画・設計を行う。

②Do(実施・実行):計画・設計に基づいて業務を実行する。

③Check(点検・評価):実施結果が計画通りであるかの評価分析を行う。

④Act(処置・改善):実施結果が計画どおりとなっていないばあいは、必要な措置を行い、次の段階のPlanに反映させる。これにより製品の品質が向上する。

ISO9000で要求されている継続的改善のためにはこの手法がもっとも有効である。

4.5 建築生産とPDCAサイクル

 トラブル防止という観点から建築生産におけるPDCAは以下のように考えることができる。

①Plan(計画):文字通り、建物の計画・設計と考えてよい。

②Do(実施・実行):建築・設備の施工。

③Check(点検・評価):竣工した建物の品質・使い勝手等の評価分析。

④Act(処置・改善):不具合箇所があった場合の是正処置や手直し。

⇒次の段階の「Plan」:上記④の情報を基に、より高い品質の建物の計画・設計。

 上記のようなDCAサイクルで施工関係の各社は品質管理に取り組んでいる。(その割には設備トラブルはなかなか減少していないように見えるが。)

このサイクルは建築設備トラブルのうちエンジニアリングトラブルには適用可能であるが、建築計画に起因するトラブルの場合はこのサイクルがうまく回らないことが多い。その原因はミッシングリンクの存在である。

4.6 PDCAサイクルのミッシングリンク

PDCAサイクルの始まりは「Plan」である。したがってこのサイクルをどのような業務に応用しようと、「Plan」が最も重要である。

建築設計のためには、各種情報が必要であるが、品質管理のためには特にトラブル情報が重要である。

建築生産のミッシングリング(情報断絶)は、CheckとActの間にある。(図省略)

いずれの業界でも、トラブルはマイナス要因であるから、表に出ずに隠される傾向にある。建築設備のトラブル・クレームは竣工引渡し後に発生し、通常はゼネコン・設備工事会社で対応している。したがって、トラブル情報が設計者(設備・建築)に伝達されることが少なく、「Plan」に反映されない。『マサカ』『マタカ』が解消されないゆえんである。この傾向は、最近はエンジニアリングトラブルにも及んでいるのが問題である。

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