建築設備トラブル概論 6.設備トラブルの性格付け②

2023年06月30日

コラム:『マサカの話』誕生秘話

「マサカ」の話は筆者の現役時代の社内報に載せた事例から始まっているが、そのきっかけになった話をあげる。

 バブルの時期には、小生の在籍していた事務所も多少のゆとりが出来たので、社内報を発行する事になった。ここに、今までの諸先輩方の失敗談を載せて、設計活動の参考にしようということである。

設備設計の立場からはトラブルやクレームにはたくさん遭遇している。といって水が漏っただの、冷暖房の暑い寒いなどのトラブルは数が多いが、(施工ミスもあって)建築設計の参考にはあまりならないし、事故報告書的な書き方になりやすく面白くもない。いろいろ考えているうちに手ごろな事例に出会った。建築設備のトラブルではないが、設計事務所の社内報に載せるには手ごろな事例である。ということでこれにあわせて、似たような事例も紹介することにした。

さてテーマは決まったが、タイトルが難しい。建築設計の部長に、第1回目のテーマとその後の予定のトラブル話を上げて、タイトルについて相談したら、「山ちゃん、いろいろ考えて設計したけど、予想外のトラブルになったんだろ。それなら思いがけないということで「『マサカ』の話」としたらいいんじゃないか」とのアドヴァイスでタイトルが決まった。

第1回目のトラブル話は下記である。

『某ビルモニュメントのトラブル』

大事件ではないが、20年近く前に大手新聞の地方版に載ったほどのトラブルなので神奈川県の方は覚えておられるかもしれない。

 写真は某私鉄駅ビルのアトリウムである。鉄道路線の拡張に伴い、駅の上に横長の商業ビルが建設された。写真に向かってアトリウムの左側には駅の改札口があり、右側には百貨店の入口がある。両側とも写真の枠外に建物が長く伸びており、全長200m以上の細長い建物である。(想像してください)

また、道路の手前には学校のキャンパスがあり、奥の開口は地元商店街につながっている。開口部はあるが、手前側のほうが大きい。また、屋根の一部はガラス張りであった。

このアトリウムに、直径2200㎜のステンレス球鏡面仕上のモニュメントが設置された。モニュメント側面中央部に直径 500㎜深さ 150㎜程度の凹部があり手前を向いている。凹部の真中に孔が開いていて覗くと反対側が見える。写真は手前側から見た物で、実はこのモニュメントが悪さをしたのである。 子供が上って落ちたとか孔に何か差し込んだとか言う話ではない。(上られない様にH=2200となっている。) 危うく事故が起こるところだったのである。

筆者も何かの打合せでこのビルに行った際、モニュメントが黒いヴィニ-ルシ-トに覆われているのに気付き担当者に尋ねて分かった次第である。

(写真挿入)・・・すみません挿入出来ませんでした。

『マサカ』の原因には風・雨・水・音・熱・光・雪・氷・匂い等の自然現象が多い。凹面鏡には焦点がある。上記の原因は太陽光線であった。ギリシャの乙女が凹面鏡でオリンピックの聖火をつけるのと同じ原理により、東面学校側の開口部から差し込んだ光が反射し、待合わせ中の学生の服に焦点が当たって焦がしてしまったのである。話を聞いた設計担当者が革カバンで試してみたところ数秒で煙が出始めたというから凄い。

現在では凹面部をサンドブラストしてトラブル防止を計っている。

「アトリウムの上のガラス屋根面の光の反射についてはどっちの方向に行くか、問題がないか色々検討したんですがね。『マサカ』あれがね-。」というのが設計担当者の感想。モニュメントが屋根のあるアトリウムの中に置いてあったのが『マサカ』の一因、その設計は当社業務外であったのがもう一因であるが、オ-プンが11月で東側開口部からの日射が低く春先になる迄モニュメントに届かなかった事も関係者が気が付かなかった原因である。

(写真挿入)・・・すみません挿入出来ませんでした。

 余談であるがこのモニュメントの頂部にも孔が開けられておりアトリウム上部のガラス面からの日差しが夏至の日の12時に床迄真っ直ぐに差し込む様になっている。これの制作と据え付けの指導にも当社の監理者が与かっており結構大変な仕事であったとの事。竣工後夏至の日に確認したところ大きな影の中に丸く光がありホッとしたとはご同慶の至りである。夏至の前後1週間は見られるという事である。

Copyright © 2019-2020  建築設備解体新書 All Rights Reserved.
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう