建築設備トラブル概論⑪ 現象要因別トラブル③

2023年08月14日

(コラム):給排水設備技術者は、躯体利用の受水槽の水は飲まない。

筆者の初めての現場が竣工し、新築ビルの竣工図作成やアフターサービスのためにしばらく現場事務所に残っていたころ、給排水設備の社員から「お前らこの水を飲んでいるのかよ」と言われた。建物が完成したのであるから水栓を捻ればきれいな水は出てくる

然し躯体利用の貯水槽は竣工前に清掃してはあるが、給排水設備の技術者にとっては、しばらくの間は「あれ(清掃前の汚れた状態)を見たら飲む気にならない」そうである。受水槽が現在の形に改められたのは当然のことといえる。


【浸 水】冠水と同様の現象であるが、建物内に雨水が流入する場合が一般的と考える。雨水浸水のトラブルについては、敷地の状況に合わせて建築的・設備的に対応しておく必要があり(建築基準法第19条)、集中豪雨時に排水管からの逆流による浸水となる(MA)。

浸水トラブルへの対応が不十分であると、ピット式駐車場や地下駐車場の水没トラブルに至る。

浸水事故の大きなものは、マンションバルコニーの排水口が落葉でつまる事によるバルコニーからの室内への雨水の浸水である。これを防ぐためにはバルコニーにオーバーフロー管が必要であるが、なかったり、小さかったりするのはよく見かける。(MA)

地階ドライエリアで排水口をフロアドレインとしたため、落葉の清掃不良でここに面した電気室に浸水した事例がある。屋上でなくても雨水の排水口はルーフドレインとしなくてはいけない

空調換気設備では、地下系統のガラリや換気口の位置が低く、ここからの雨水の浸入もある。

【溢水(オーバーフロー)】

  • 水を貯める装置からの溢水

設備には目的に応じて、いろいろな用途の水をためる装置がある。(受水槽、高置水槽、膨張水槽、水補給水槽、排水槽、ドレンパン等)排水槽以外の装置類の排水は、通常は排水目皿等に開放されているので、ごみづまりにより溢水する。

排水槽、ドレンパン以外の装置は通常配管系に水を供給する機能も兼ね備えているので、自動給水の場合は、制御するシステムに不具合があれば、溢水(オーバーフロー)トラブルが発生するので、必ず警報が付いている

また、温水系のばあいは、配管系全体の保有水量に対して膨張タンクの容量が適切でない場合は、水の膨張分が溢れることになる。

  • ドレンパンからの溢水

空調機、ファンコイルユニット、エアコン室内機のドレンパンは溢水に対しては全く無防備である。ドレン排水は簡単な表面張力によっても流れが阻害される。ドレンパン排水管は底面取り出しがのぞましいが、通常は側面取り出しである。ドレンパンの水位は小さいので、横取出しの場合は小さなゴミなどで簡単に表面張力が形成され、溢水事故になりやすい。したがって、側面に排水口がある場合は、排水管は排水口からすぐに立ち下げてから横引き配管とする。

またドレンアップ装置が付いている場合でも、ドレン排水横引き管への接続は、ユニット排水管を横引管より上に立ち上げ、上から落とし込むような形とするのが溢水防止に有効である。

地下ピット湧水の排水管とファンコイルユニットのドレン管を合流排水したため、屋外の枡で詰まった際に、排水ポンプ運転で2階のドレンパンで溢水した事例や、雨排水管にエアコンのドレン配管を接続し、集中豪雨時に逆流してドレンパンから溢水した事例もある。(MA)

空調機器のドレン配管系統は、どこかで解放されているので、これに接続されている大きな配管類の水抜きバルブを大きく開けると下流側機器のドレンパンが溢れる。改修工事の際は注意が必要である。(MA)

排水器具や、排水枡からの溢水トラブルについては「吹き出し」トラブルの項で述べる。

  • 排水管からの溢水

排水配管は概ね開放配管であるから、≪先が詰まれば手前で溢れる≫という給排水設備の第2法則が成り立つ。溢れ方は、静かに溢水する場合と、吹出す場合がある。「吹き出し」現象は別項にて述べる。

最も一般的な事例は、排水管に異物を流したための、排水不良に伴う溢水事故であり、雨排水に関する最も一般的な事故は、落葉によるトラブルである。(MA)

また、敷地外構の雨水配管の設計施工が不適切であると、雨水枡・雨排水用グレーティング、U字冓などからの雨水の溢水がある。



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